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MotoGP ニュース

投稿日: 2018.10.01 19:11
更新日: 2018.10.01 19:47

MotoGPマシン作りに変化あり。ドゥカティ好調はマスダンパーのおかげか/ノブ青木の知って得するMotoGP

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MotoGP | MotoGPマシン作りに変化あり。ドゥカティ好調はマスダンパーのおかげか/ノブ青木の知って得するMotoGP

 スズキで開発ライダーを務め、日本最大の二輪レースイベント、鈴鹿8時間耐久ロードレースにも参戦する青木宣篤が、世界最高峰のロードレースであるMotoGPをわかりやすくお届け。第14回は、MotoGPマシン作りのトレンドについて。現在のMotoGPは、車高のトレンドが大きく変化しているというが果たしてその理由は。

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 アラゴンGPのフリー走行を観ていて、「ん! んんん~!?」と画面に釘付けになった。何度も見直した。気になったのは、絶不調が続くヤマハYZR-M1を駆るバレンティーノ・ロッシの挙動だ。コーナー立ち上がりでリヤタイヤが横に逃げている! これだ。ほんのわずかな“逃げ”だったが、これは無視できない。

 現在のMotoGPは、ほとんど気付かないような“些細なこと”が勝敗を分けるシビアな世界だ。たまたまフリー走行の映像に鮮明に映し出された“アウトに逃げて行くリヤタイヤ”だが、ロッシ自身が決勝レース後に「リヤタイヤをうまく機能させられない」とコメントしていたほどから、つねに抱えている問題なのだろう。

アラゴンGP決勝後に「リヤタイヤをうまく機能させられない」と語るバレンティーノ・ロッシ
アラゴンGP決勝後に「リヤタイヤをうまく機能させられない」と語るバレンティーノ・ロッシ

 少し前まで、MotoGPマシン作りのトレンドは“長く、低く”だった。ちょっと何言ってるか分かんないかもしれませんが、“長く”は文字通り車体の長さのこと、“低く”は文字通り車高のことだと思ってください。レースやバイクに詳しい人ほど信じられないかもしれないが、ここでの長さや高さは、数センチという非常に大きな単位での話だ。

■車高は“低く”から“高く”に

 まずカンタンに“長さ”についてだけ言っておくと、2ストローク500cc時代は“短く”が基本だった。理由は、単純にクイックな運動性能を求めてのことだったと思う。それが4ストロークエンジンになってからは、概ね“長く”の方向に進んできた。ホイールベースを伸ばし、それに伴って車体全体も長くなったわけだが、主な狙いはスライドコントロールをしやすくすること。滑らせない走りが前提だった2スト500cc時代は“短く”、滑らせる走りが前提の4スト時代は“長く”ということですね。

 さて、問題は高さだ。基本的にレーシングマシンは“低く”を狙うもの。安定感が得やすいからだ。MotoGPでも、ブリヂストンタイヤ時代まではだいたい低いマシンが多かった。ところが、ミシュランタイヤにスイッチして以降のトレンドは“高く”だ。高い位置からリヤタイヤにしっかりと荷重をかけることで、機能させているのだと思う。

 高さのあるバイクは、ピッチングという上下動が強くなりがちだ。それを逆手に取ってリヤタイヤを効果的につぶし、性能を発揮させているのだろう。特にうまく行っているのがドゥカティで、“長く、高く”のバランスが非常に良好だ。その結果として、マシンの安定性とスライドコントロール性、そして運動性がいずれも高いレベルに達している。

リヤタイヤがアウトに逃げてしまう要因は車体の低さにあるか。
リヤタイヤがアウトに逃げてしまう要因は車体の低さにあるか。

 一方、絶不調から抜け出せないヤマハYZR-M1の車体は、なぜかずっと低いままだ。これがリヤタイヤがアウトに逃げてしまう要因だとワタシはニラんでいる。この現象、つねに起こるわけではなく、ある条件が重なった時に発生しているようだが、思うように加速できないワケだから、決して無視できないタイムロスにつながっていることは間違いない。


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