スズキで開発ライダーを務め、日本最大の二輪レースイベント、鈴鹿8時間耐久ロードレースにも参戦する青木宣篤が、世界最高峰のロードレースであるMotoGPをわかりやすくお届け。第16回は、11月に行われたバレンシアテストとへレステストで見えた各メーカーのテスト状況や注目の新人ライダーについて。2018年中に行われた2回のオフィシャルテストを青木はどう見ていたのか。
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いやぁ、驚きました! ホルヘ・ロレンソ(レプソル・ホンダ・チーム)、ヘレステストで4番手ですよ!! ロレンソ+ホンダRC213Vというパッケージ、2019年シーズンには想像以上のパフォーマンスを見せるかもしれない……! 気が早すぎる予想ですが(笑)、走りっぷりに自信がみなぎってるんだよね。
■ロレンソの要望に素早く対応したホンダ
ドゥカティに移籍した時は苦しみに苦しんだロレンソ。「ホンダへの移籍ではそれほど苦労しないだろう」と思ってはいた。でも、ここまで早い段階から高いパフォーマンスを見せるとは本当にオドロキ! 現時点では明らかに乗りやすそうにRC213Vを走らせているし、コーナリングスピードを究極まで高める彼のスタイルとも意外なほどマッチしている。
ホンダとしても、最高峰クラスで3度タイトルを獲っているロレンソを迎えるにあたり、かなり気合いが入っているようだ。ホンダはここ3年連続でチャンピオンを獲得してはいるが、すべてマルク・マルケスによるもの。つまりはマルケスの独り相撲だ。ホンダは“RC213Vはマルケスじゃなくてもタイトルが獲れるマシン”と証明したいだろうから、ロレンソへの全面協力を惜しまないというムードが濃厚だ。
その表れのひとつが、ロレンソが大いにこだわるタンク形状への素早い対応だろう。短時間で細かくタンク形状を変えてくるあたり、ホンダはライダーの“やる気スイッチ”を押すのがうまい。早くも深々としたバンク角で走っているロレンソは、間違いなく“やる気スイッチオン!”だ。
ヘレステストをトップタイムで終えた中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)も、完全に“やる気スイッチ”が入っている。主には2018年シーズンにチームメイトのカル・クラッチローが走らせたマシンでテストして“開眼”した中上だが、マシンパフォーマンス次第でイケることを示したことは間違いない。ヘレスは中上、マルケス、ロレンソの1-2-4で、ホンダ好調を存分にアピールしたテストとなった。