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MotoGP ニュース

投稿日: 2019.02.02 06:00
更新日: 2019.02.02 11:51

ホンダRC213Vの強さ徹底解剖。開発のキモは「スイートスポットの広さ」/MotoGPインタビュー前編

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MotoGP | ホンダRC213Vの強さ徹底解剖。開発のキモは「スイートスポットの広さ」/MotoGPインタビュー前編

 世界のサーキットで熱いドラマが展開された2018年シーズンのMotoGP。最高峰クラスでホンダが2年連続3冠(コンストラクター、チーム、ライダー)を達成した原動力となったのが、ホンダRC213Vである。ホンダ・レーシング・コーポレーション(HRC)でレース部門の責任者を務める桒田哲宏氏に、その強さの秘訣を聞いた。

■勝てるレースできっちり勝っていく戦略が大事

 レプソル・ホンダ・チームは2018年シーズンにおいて、2年連続3冠を獲得している。その圧倒的な強さはどこからくるものなのだろうか。

「我々としてはぜんぜん圧倒的だったとは思っていないですよ。ここ数年、ライバルとトータルパフォーマンスの差が縮まってきています。最終戦までもつれ込んだ2017年は特にそうでした。ヤマハとは昔からいい勝負でしたが、それに加えてドゥカティが強くなっているし、2018年はスズキも調子を上げてきた。簡単には勝たせてくれませんよ」

ホンダの二輪レース部門を統括する桒田哲宏氏
ホンダの二輪レース部門を統括する桒田哲宏氏

 傍から見るほど楽勝というわけではなかったようだ。勝てる要素として、チームとマシンとライダーの、どれが欠けてもダメ。3つの実力がそろわないと勝てないため、そこをきっちり整える努力をしているそうだ。

「マルク(・マルケス)やダニ(・ペドロサ)たちライダーも、メンタルも含めて常に上を見てトレーニングに励んでいます。チームとしてもライダーを支えつつ、マシンの方向性を見極めて開発を進めています」

 自分たちの強み、弱みを把握して、どこを中心に開発を進めれば良い結果が出るのか、ライダーが戦いやすいマシンになるのかなど、選択と集中を繰り返しながら目標を立てて開発は進められていく。今のご時世、HRCほどの超一流コンストラクターでも、湯水のように予算を使えるわけではないのだ。

「すべてのサーキットで勝てるわけではありません。それが理想ではあるけれど、現実的には難しい。ではどこで勝つか。勝てるところではきちんとポイントを取って、苦手なコースでも表彰台は逃さない。年間を通じた戦略が大事になってきます」

 ホンダにとっての強み、弱みとは何なのだろう。この究極とも言える質問に桒田氏はこう答える。

「最近のホンダのMotoGPマシンはブレーキングには強いと言えますが、逆にコーナー脱出からの加速が弱くなっていると感じます。ライダーの乗り方にもよると思いますが」

「また、タイヤがミシュランになったことも影響しているかもしれません。タイヤの個性をどう使いこなしていくかは、大きな課題です。そのためには、開発でもスイートスポットが広いマシンに仕上げていく必要があると考えます」

 2ストローク500cc時代から『パワーのホンダ』のイメージが強いが、今はそう言い切れないらしい。それはホンダが弱くなったのではなく、周りが強くなっているからだという。

 パワーと聞くとエンジン出力だと思われそうだが、それだけではなく空力やトラクション性能など、トータルパッケージとしてパフォーマンスを上げていかなければ、勝てない時代なのだ。

■スイートスポットの広さのぶんだけ強さになる

 2016年シーズンから供給されているミシュランタイヤは、以前のワンメイクタイヤサプライヤーだったブリヂストンと比べてどうなのか。

「ミシュランタイヤは、最初は苦労しましたね。最近は性能が安定してきましたが、当初はフロントのフィーリングがつかみにくかった。その点、ブリヂストンタイヤはフロントがわかりやすく、ライダーにも好評でした」

「一方、ミシュランはリヤのグリップに優れるなど、それぞれ違った個性とメリットがあります。年々マシンも進化するので、一概には比較できません。我々としては与えられた条件のなかで、いかに速く走るか。頭を切り替えてパッケージとして良いマシンを造ることを意識しています」

 MotoGP用タイヤは毎年改良されて、進化していく。コンストラクターとしてマシンに合う特性をリクエストすることはできるが、タイヤサプライヤーが公平性を重視する立場にあることはミシュランでもブリヂストンでも同じである。

「我々が特殊なのか、みんなもそう言っているのか、しっかり見極めなくてはならないですね。その上で、そういう(タイヤなどの)外的変化に強くスイートスポットの広いマシンを造る必要があります」

「一発は速いけれどセッティングがピンポイントで扱いづらいマシンでは、コンスタントに結果を出せません。スイートスポットが広いマシンが、最終的には強いと思います」

■数値化が難しい空力カウルの効果


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