イギリス在住のフリーライター、マット・オクスリーのMotoGPコラムをお届け。第7戦カタルーニャGPの決勝レースで3台を巻き込む転倒を喫したホルヘ・ロレンソ。しかし、ロレンソの犯したミスよりもマーベリック・ビニャーレスが犯したミスの方がより重大だという。
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ホルヘ・ロレンソ(レプソル・ホンダ・チーム)は、カタルーニャGPの素晴らしいレースを台無しにしたかもしれないが、彼のミスはマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が予選で行ったことに比べればずっと軽いものだ。
カタルーニャGPの決勝24周中、2周目で2番手だったマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)は、10コーナーに進入する際にアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ミッション・ウィノウ・ドゥカティ)に仕掛け、エイペックスで追い抜いた。そのためドヴィツィオーゾは、彼の典型的なアンダーカットの戦略に備えるためにラインを調整した。
そのとき、ロレンソは3番手を走行中のビニャーレスを追い抜こうとしていたが、突如として行き場がなくなってしまい、フロントブレーキを強めにかけた。そのためフロントタイヤがロックしてロレンソは転倒し、彼の倒れたバイクがドヴィツィオーゾを転倒させ、次にビニャーレス、最後にバレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)を転倒させた。
誰に責任があったかについては、まったく疑問の余地はなかった。「僕は順調なスタートを切り、順位を大分挽回した」とロレンソは説明した。
ロレンソはカタルーニャGP前の週にHRC(ホンダ・レーシング)を訪問中に3Dプリンターで出力した、人間工学に基づく新パーツを使用していた。「バイクの感触はとても良く、(決勝日は)週末中で一番良かったし、ブレーキングも大分改善された」
「9コーナーの立ち上がりで加速したが、マーベリックはマルクに衝突するのを避けるために、スロットルを閉じなければならなかった。だから僕はスリップストリームを使うためにそのアドバンテージを利用して、オーバーテイクに備えた。なぜならもっと何かをできると思ったし、順位をさらに上げられると感じていたからだ」
「でもマーベリックをオーバーテイクしようとしたタイミングは間違えていたし、とりわけ場所が正しくなかった」
「僕はおそらく興奮していたんだ。良い感触があって、どんどん速く走れると感じていたからね。めちゃくちゃなブレーキングをしたわけではなかった。マーベリックとほとんど並走していて、普段どおりにブレーキをかけたんだ」
「問題だったのは、周りにいたライダーが多すぎたことだ。前ではドヴィがコーナー出口に備えてラインを空けていた。だから僕は彼にどんどん近づいた。そして彼に衝突するのを避けるためにさらにブレーキをかけたら、フロントタイヤがロックしたんだ」
「転倒はいろいろな要素が組み合わさっていた。一番大ごとだったのは、タイトルを賭けて戦っている3人のライダーをクラッシュさせたことだ。単独クラッシュする方がよほどよかった。僕は謝ったよ」
必然的に、ロレンソの転倒による3人の被害者たちは状況について異なる見方をしている。出走した390回のグランプリレースにおいて、ひどい目にも多く遭ってきたロッシは最も冷静だった。
「これはレースだ。時にはこういうことも起きる」と40歳のロッシは語った。