11月14日、MotoGP第19戦バレンシアGPの開催地であるリカルド・トルモ・サーキットで、ホルヘ・ロレンソ(レプソル・ホンダ・チーム)が引退会見を行った。約20分にわたる会見のなかで、ロレンソは引退という決断を下すに至った心情、そしてこれまでのキャリアを振り返り、感謝の気持ちを言葉にした。会見にはチーム関係者やMotoGPライダーたちが出席し、ロードレース世界選手権で通算5度のチャンピオンを獲得したロレンソへ向け、スタンディングオベーションが送られた。
「今日は僕のためにこの会見に集まってくれてどうもありがとう。とてもうれしく思っているよ。ライダーには、4度、キャリアのなかで重要な日があると思っていた。ひとつは最初のレース、ふたつめは最初の勝利、そして最初のチャンピオン獲得──もちろん、すべてのライダーがチャンピオンを獲得できるわけではないけれど──、そして、引退の日だ。このレースがMotoGPで、僕の最後のレースになることを発表する。このレースをもって、レーシングライダーを引退します」
「思えば3歳のときにすべてが始まった。それから約30年間、このスポーツ、僕のスポーツに捧げてきた。僕と働いた人は、僕がどれだけ完璧主義者か、どれだけエネルギーを注ぎ、どれだけ注力してきたのかを知っている。“完璧主義者”にはたくさんのモチベーションが必要で、それがすばらしい9年間を過ごしたヤマハを離れた理由だった。ドゥカティへ移籍したことは、大きな力とモチベーションを与えてくれた。例え十分な結果ではなくても、戦い続けることをあきらめることはなかった。そして、僕は(2018年イタリアGPで)大勢のドゥカティ・ファンの前で、すばらしい優勝を飾ることができたんだ」
「それからホンダと契約をしたときも、また自分を押し上げる力を与えてくれた。すべてのライダーの憧れである、HRCのファクトリーライダーになることができたんだ。けれど残念なことに、シーズンのなかで、そして僕のパフォーマンスにおいても怪我がとても重大な要素になった。通常の身体の状態でバイクに乗ることができなかった。加えて、僕には自然に感じられないバイクがレースを難しくした。でもとにかく、戦う姿勢は失わなかったし、時間の問題だろうと思っていたんだ」
「けれど、モンメロのテスト(第7戦後にカタルーニャで行われた公式テスト)でとてもひどいクラッシュを喫し、そのあと、アッセンでも大きな転倒をした。グラベルを転がり、立ち上がってこう思ってしまった。『ホルヘ、これは本当に価値があることなのか? もうへとへとだ』。数日後、自分のキャリアについて振り返った。まだどんな決断も下したくはなかったから、そのまま(レースを)続けたんだ」
「すべてはそのときからで、この“丘”は僕にとってとても高かった。この高い山を越え続けるモチベーションを見つけられなかったんだ。知っての通り、僕はバイクで競い合うことが大好きだし、このスポーツを愛している。勝つことが大好きだ。それでも、悟ってしまったんだ。短い期間で、ホンダで成し遂げるのは難しいだろうと」