レース界のマニアック“ヘンタイ”カメラマンこと鈴木紳平氏がお届けするブログ。今回は、8月4日〜6日に開催された『2023 FIM世界耐久選手権(EWC)第3戦“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第44回大会』を振り返る、各メーカーのマシン探訪【後編:ヤマハYZF-R1、スズキGSX-R1000R、カワサキNinja ZX-10RR、BMW M1000RR】です。
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モータースポーツを愛する皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
鈴鹿8耐振り返りブログ第3弾『各メーカーマシン探訪:後編』であります。
早速、いきましょう。7号車 YART YAMAHA YZF-R1です。ドライカーボン製フロントフォークのインナチューブプロテクターが特徴的です。
レギュレターはカウル後端に設置されています。この辺りは全日本ロードレース選手権のJSB1000と同仕様。フロントブレーキローターは、外された状態です。
EWC勢の多くがブレーキクーリングダクトではなくブレーキキャリパーを保護するドライカーボン製のカバーを装着して鈴鹿に現れました。中のキャリパーはブレンボの最新版GP4だと思われます。
整備中のヤマハYZF-R1。
エンジン周辺にはセンサー、ECU関係のパネルが設置されています。
整備中のヤマハYZF-R1のラヂエーター・オイルクーラー。
ヤマハYZF-R1のスイングアーム。JSB1000のそれとは形状が異なります。
12号車 ヨシムラSERT Motulにいきましょう。ヨシムラもフロントブレーキキャリパーカバーを装着しています。
EWC勢のレギュラー組の多くが実施していたピットストップ時の前後左右方向の水平出し。とても細かいことですが正確な給油量のためには、欠かせない作業のようです。ジャッキ部分で調整し水平を出していきます。
特に理由はありませんが美しいのでスズキGSX-R1000R用のスイングアームを見ましょう。すべてが手作業による溶接。ただただ美しく、しばしの間見惚れます。
続いては11号車 Team Kawasaki Webike TrickstarのカワサキNinja ZX-10RR。ECUが吸気ボックス手前に縦置きに配置されています。
特徴的なバッテリーの搭載位置。重い物はなるべく下方、車体中心に。ですがエンジンとエキゾーストとの角地でなかなか過酷な環境な設置場所です。毎戦交換なのでしょうか。ブランドはBSバッテリーリチウムイオンで、型番はBSLI-04/BSLI-06。お値段は、約3万円です。
最後は37号車 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM。ドイツからの刺客、BMW M1000RRです。BMWワークスが投入する最新鋭のマシンは、フルドライカーボンのカウルを纏い、とにかく大きく頑丈そうに見えます。スロットルは電子スロットルとなります。
フロントブレーキはヨーロッパメーカーではなく日本のニッシン製。ホンダの17号車 Astemo Honda Dream SI Racing、73号車 SDG Honda Racingと同仕様と思われますが、取付ボルトやキャリパーブラケットとのカラーを見ると、撮影時点ではまだブレーキローター径を大きくする余地があるように見えます。3Dプリンター製のブレーキクーリングダクトを装備。
フロントフォークのアウターチューブはドライカーボン製。
ラヂエーターはアジアロードレース選手権で使用されている両サイドに張り出しがあるコの字型ではなく一枚モノ。ラヂエーターキャップの下からクイックリリース式のようなホースが確認できます。この配管からクーラント液を交換出来るシステムなのかもしれません。
下段のオイルクーラーの配管には耐熱カバー、エンジン下部のオイルパンにも放熱用のフィンが施されていることからエンジンの温度は厳しめな可能性も。
スイングアームは2種類が確認できました。両者にどのような違いがあるかは取材していませんがこちらがTカーで使用していた個体。
こちらがレースで使用された個体のスイングアーム。右内側に人の字型の追加プレートが見えます。
そのスイングアームが動く支点となるピポットシャフト部には締め付けトルクを調整・管理していると思われるプレートを装着。公式サイトによると厚みの異なるワッシャーを併用するようです。価格は約1000ドル。反対側にも同じ表示のプレートが装着されています。
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皆さま、鈴鹿8耐振り返りブログはいかがだったでしょうか。
バイクに触れて感じるはひとつひとつの仕事、細かなパーツに各々が込めた熱量の大きさ。年に一度の“鈴鹿8耐”決戦ともなれば、その熱量はなおさらです。
皆が頑張った“8耐ウイーク”は、各人の胸に深く刻まれて今年も夏は過ぎていきます。
再び2024年の夏、美しいマシン、素晴らしいレース、そして19時30分にたくさんの笑顔が見られることを願い、鈴鹿8耐テーマソング “風の旅人” より五木寛之先生の言葉をお借りしてブログの幕にしたいと思います。
“青春はいつの日もEndurance また逢うその日まで鈴鹿の夏にGoodbye”
皆さま、またお会いします。