日本では10月19日に発売されるプレイステーション4用ソフト『グランツーリスモSPORT』。シリーズプロデューサーとして開発を率いるポリフォニー・デジタル代表取締役の山内一典氏に、最新作の見どころや、長年参戦しているニュルブルクリンク24時間耐久レースの魅力を聞いた。
グランツーリスモといえば、1997年にプレイステーション用ソフトとして初代が発売され、今年でシリーズ20周年を迎えるビッグタイトル。これまでの世界累計販売本数は7690万本にも及ぶ。
このシリーズの1作目からシリーズに携わっている山内氏は、日本を代表するゲームクリエイターのひとり。しかし、モータースポーツファンにとっては、ニュル24時間に参戦するレーシングドライバー“山内一典”としてのイメージが強いかもしれない。
2017年は「どうしても忙しくて」ニュル24時間に足を運べなかった山内氏だが、「現場に行きたかった、というよりもレースに出たかった」と、悔しさをにじませた。
「世の中に、あそこまで楽しいものはありません。あの独特のヒリヒリ感はニュルでしか味わえませんよ」
「どのドライバーも命がけで走っていますから、他のチームも含めて友情みたいなものも生まれますし、パドック全体がひとつの家族のような状態になります」
「そして、いざレースになると“戦争”が始まるわけです。どのドライバーも命がけで戦っていますから、面白くないわけがありませんよね」
「時間があれば来年(は参戦したい)」と語った山内氏が、現在開発をリードしているのがシリーズ最新作のグランツーリスモSPORTだ。
このグランツーリスモSPORTはフルHDを超える4K画質やHDR(ハイダイナミックレンジ合成)への対応、車両モデリングデータの刷新、最新の挙動シミュレーションの採用などにより、従来作を凌駕する高画質、高品質を実現している。
またFIAと協力してオンライン・レーシングの未来形を提唱するのが『スポーツモード』。ドライビングテクニックだけでなく、プレイヤーのマナーも評価し、フェアな形のオンラインレースを提供するほか、リアルなモータースポーツライセンスと同等の価値を持つ『FIAグランツーリスモ・デジタル・ライセンス』の発行といった新たな取り組みも用意された。
2013年に発売されたグランツーリスモ6以来となる最新作について、山内氏は「グランツーリスモSPORTは、20年間に及ぶグランツーリスモの歴史のなかで1番いい部分をすべてピックアップしてエッセンスを凝縮した」と語る。
「そしてFIAとともに始める“これからのモータースポーツの100年”のスタート地点でもあります」
「HDR技術や『スケープス』のような、新しいクルマの写真の世界などを含めて、これまで経験したことのないような要素が詰まっています」
「間違いなく、プレイした人の人生を変えるものになっていると思いますので、そこは期待してほしいですね」
150台以上のクルマを収録しているグランツーリスモSPORTだが、どのクルマのモデリングデータ制作もひとりのアーティストが全行程を担当。自動車メーカーが所有するCADデータを除けば、世界でもっとも高品質・高精度だというデータは、ボディのフレークのサイズも忠実に再現。1台あたり6カ月もの時間を費やして作り上げられる。
また、サーキットのデータは上空からのレーザースキャンデータと、クルマにスキャナーを搭載して得た路面データを併用して精密に作成されているほか、サーキット周辺の木々といった植生についても、その種類ごとに葉っぱの光の反射率や透過率などを測定して忠実に再現しているという。