じつはこの後、Fuji-1 GPの決勝レースでもドライブする予定だったのだが、まさかの事態が。第3スティントを担当しようと筆者がヘルメットをかぶり、GTドライバーよろしくモニターを見上げていると、なんとRS3 LMSが白煙を上げピットに戻ってくるではないか。
今回のFuji-1 GPでは、60台ほどの参加者がいてコース上はトラフィックがかなりあったのだが、そのなかでRS3 LMSは右リヤを他車とヒットしてしまったのだ。念のためすぐに乗れる準備は整えていたが、一ツ山代表から「これはダメですね〜」と声がかかる。残念ながらリタイアだ。
60台ものトラフィックのなかを走る自信はまったくなかったので、出番が回ってこなくてホッとしたのが正直なところ。よく業界の噂話で聞く「アイツ、ウン千万円のスーパーカーやっつけたらしいよ」の「アイツ」にならずに済んだのだから。
というわけで結局RS3 LMSのドライブは午前のほんの15分ほどで、筆者のベストタイムは2分04秒程度。正直2分は切りたかったが、まあ仕方が無い。RS3 LMSを無事に戻し、そのフィーリングを確認するのが今回のミッションだ。他車がいなければ2分は切れていた気もするし。
結論から言うと、RS3 LMSは「こんなにカンタンで楽しいの?」というクルマ。何せクラッチを繋ぐのは慣れればすぐにできるし(ストールしたけど)、その後のシフトも、グランツーリスモを楽しんでいる気分だ。当然シフトショックは大きいが、レーシングカーなら普通のレベル。パワステもABSも付いていて、疲れも少ない。電子デバイスの恩恵を大いに感じることができた。
そんな話はいつもドライバーの皆さんから聞いてはいたのだが、改めて乗ってみると、それがどれだけ安心してドライブできることに繋がっているかを痛感した。このRS3 LMSは、サーキット走行をある程度かじった経験がある人なら、絶対に乗りこなして2分を切ることができるはず。もちろん、そこから少しずつタイムアップし、プロのタイムに近づくには相応の努力が必要だが。
富田先生も「最近のレーシングカーはすごいでしょ?」と言っていたが、まったくそのとおり。ジェントルマンドライバーも容易にドライブができ、かつ壊れない、カッコいいレーシングカーが1500万円で買えてしまうご時世なのだ。カスタマーレーシングカーが流行るのは至極当然。そして、このTCRというツーリングカーの新しいコンセプトが世界中に広まったのには合点がいった。また、最新のFIA規定に沿った安全性が確保されているのも魅力だ。