世界各国で開催されているポルシェのワンメイクレース『ポルシェカレラカップ』が日本でスタートしたのは2001年。今年で23年目のシーズンを迎えた『ポルシェカレラカップジャパン(PCCJ)』は、昨年から導入された『911 GT3カップ(タイプ992)』で競われており、ニューカップカーの実力の高さは、昨シーズン各サーキットでコースレコードが更新されていることからも明らかとなっている。
タイプ992導入2年目となる2023年のPCCJは、4月15日〜16日の岡山大会で幕を開けて、8月26日〜27日の鈴鹿大会までSUPER GT第1〜5戦の併催レースとして各大会2戦、計10戦が行われる。
最終戦はF1日本GPのサポートレースとして1戦のみが開催され、シーズン全体で6大会11戦の開催を予定する。参戦ドライバーのクラス区分は、今年も例年と同じくプロクラス、プロアマクラス、アマクラスと3クラスに分かれているが、プロクラスのみクラス別成績の設定はされておらず、プロアマクラスとアマクラスのドライバーのみがクラス別順位に沿ったクラスポイントを獲得する。
そしてシリーズエントリーする全ドライバーは、各レースのオーバーオール(総合順位)結果に沿ったオーバーオールポイントを獲得する。つまり、プロクラスのドライバーはオーバーオールポイントのみ獲得し、シリーズチャンピオンは最終的なオーバーオールポイントのランキング1位のドライバーに与えられることになる。また、プロアマクラス及びアマクラスの最終ポイントトップのドライバーには該当クラスのチャンピオンが与えられる。
■Porsche Carrera Cup Japan 2023 レースカレンダー
Rd. | Date | Circuit | Event Name |
---|---|---|---|
第1-2戦 | 4月15〜16日 | 岡山国際サーキット | SUPER GT第1戦 |
第3-4戦 | 5月3〜4日 | 富士スピードウェイ | SUPER GT第2戦 |
第5-6戦 | 6月3〜4日 | 鈴鹿サーキット | SUPER GT第3戦 |
第7-8戦 | 8月5〜6日 | 富士スピードウェイ | SUPER GT第4戦 |
第9-10戦 | 8月26〜27日 | 鈴鹿サーキット | SUPER GT第5戦 |
第11戦 | 9月22〜24日 | 鈴鹿サーキット | F1世界選手権 日本GP |
■Porsche Carrera Cup Japan 2023 シリーズエントリーリスト
No. | Class | Driver | Team |
---|---|---|---|
2 | Am | 林 雅弘 | Team KRM |
7 | Am | IKEDA | Team KRM |
9 | ProAm | 武井真司 | BINGO RACING |
10 | ProAm | MOTOKI | Rn-sports |
22 | ProAm | Zhou Bihuang | SKY MOTORSPORTS |
51 | Am | 春山次男 | BINGO RACING |
60 | Pro | 小河 諒 | BINGO RACING |
63 | ProAm | 長嶋重登 | Team KRM |
77 | ProAm | 浜崎 大 | Masaru HAMASAKI |
88 | Am | Tiger Wu | SKY MOTORSPORTS |
91 | Pro | 佐藤巧望 | PORSCHE JAPAN |
98 | ProAm | IKARI | Bionic Jack Racing |
Pro=プロクラス、ProAm=プロアマクラス、Am=アマクラス
注目の開幕ラウンドとなった岡山大会は、4月15日(土)の11時40分から雨が降り続く中で30分間の予選が行われて、昨年3度目のPCCJシリーズチャンピオンに輝いたプロクラスの小河諒がオーバーオールのポールポジションを獲得。
2番手には、今年のポルシェジャパンジュニアドライバーである佐藤巧望が着ける。そして同日の16時30分、ついに今年の開幕となる第1戦のフォーメーションラップが開始され、再び全車がグリッドに整列してからレースはスタートする。
ここで佐藤が好スタートを見せて小河の前に出るが、小河はすぐにポジションを取り戻し、レース序盤は小河、佐藤のテールトゥノーズ状態が続く。そして7周目のヘアピンで、ついに佐藤は小河を捉えてトップに躍り出ると、そのまま逃げ切ってPCCJデビューレースで初優勝を飾る。
ポルシェジャパンジュニアドライバーのデビューレース優勝は2018年以来と5年振りのことで、佐藤にとって四輪レースでの優勝は2019年のスーパーFJ(オートポリス)以来と久しぶりとなった。雨の中で安定した走りを見せた佐藤は、コース上の勝負でベテランの小河をオーバーテイクして優勝を飾り自信を得たといえる。
第2戦は、翌16日(日)の9時から行われたがコースの一部がまだ濡れた状態の難しいコンディションとなった。この状況になると、経験値で小河が有利となりスタート直後から徐々に佐藤を引き離し、最終的に9秒534の差を着けて今シーズン初優勝を成し遂げた。
レース後、佐藤は「今日のような状況下では自分の引き出しが少ないため、小河選手との差が出てしまいました。もっと勉強していく必要があります」と反省点を語る。一方の小河は、「昨日は悔しい思いをしましたが、今日は勝てて良かったです。でも、佐藤選手も徐々にクルマに慣れてくると思うので安心はできません」と警戒する。
佐藤は順応力の高さを見せて初戦で勝利を収め、小河はベテランらしい走りで第2戦を制し、ふたりとも岡山大会で45点を獲得してオーバーオールランキングのトップに並ぶ。次戦以降、新人とベテランがどのような戦いを繰り広げるのか注目される。
今年6台がシリーズエントリーするプロアマクラスは、昨年のプロアマクラスチャンピオンであるIKARI、2017年にジェントルマンドライバーとして初めてシリーズチャンピオンに輝いた武井真司、そして昨年のアマクラスチャンピオンであるMOTOKIと3人の王者経験者に加え、ベテランの浜崎大、長嶋重登、PCCAでも活躍するZhou Bihuangと猛者揃いだ。
開幕大会の予選結果を見ても、1秒以内に6台が並ぶ混戦でワンミスがグリッド順位に大きく影響していた。もちろん決勝レースでも、スタートからゴールまで手に汗握る激しいバトルが至る場所で展開され、観客を魅了した。
この今シーズンもっとも熱いプロアマクラスは、2年連続での王者獲得を目指すIKARIが2連勝と幸先良いスタートを切りランキングトップに立つ。それを31点で追いかけるのがMOTOKIとZhou Bihuangだが、それ以外のドライバーも含めて実力はほぼ互角といえる。
次戦富士大会は、各ドライバーとも走り慣れているコースだけに、開幕戦以上の激しいバトルが予想される。また、実力伯仲のため決勝でのオーバーテイクは難しくなってくるため、予選順位がレースに大きく影響するだろう。
そして4台がシリーズエントリーするアマクラスは、ベテランと復帰組が切磋琢磨での戦いを繰り広げている。岡山大会では、新型コロナウィルス感染症の影響で2019年以来となるPCCJ参戦を果たした台湾のTiger Wuがポール・トゥ・ウィンで2連勝を成し遂げた。コロナ禍のため渡航できず、台湾では練習走行も満足にできていなかったため、久しぶりのレースで優勝できたのはスタッフのお陰と全身で喜びを表現していた。
また、復帰組としては約30年振りのレース参戦となる林 雅弘も開幕戦で2位表彰台を獲得と、今後の活躍が注目される。そして、ベテランとして粘り強い走りを見せる春山次男、参戦2年目ながら着実な走りでポイントを積み重ねていくIKEDAも見逃せない。
このように今シーズンのPCCJは、例年以上に激しいバトルが展開されている。5月3-4日の富士では各クラスでコースレコードの更新が期待されているだけに、ぜひ熱き戦いに注目してもらいたい。