F1ジャーナリストの今宮純氏が様々な要素を【対決】させていく新企画。第3回はふたりのフィンランド人ドライバーを分析する。メルセデスとフェラーリという二強に在籍する彼らがそれぞれのチームメイトに打ち勝ち、史上初のフィンランド人ワン・ツーフィニッシュを達成する日は来るのだろうか。
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「フライング・フィン」――天駆けるフィンランド人を象徴する意味だ。バルテリ・ボッタスがロシアGPで4年ぶりにフィンランド人通算47勝目(13年オーストラリアGP・キミ・ライコネン以来)。イタリアの43勝を超える国別・勝利数は第5位。GPが一度も開催されず、チームもエンジンメーカーもメジャースポンサーも無い、北の国から彼らは勝ち上がってきた。
ライコネンの出身地は首都ヘルシンキに近いエスポー。フィンランド第2の都市で人口約23万人、以前取材で現地を訪れたときは真冬なのに賑やかな街並みに驚いた。雪と氷とトナカイのイメージはなかった。ボッタスは100km以上も離れた小さな町、人口1万5000人足らずのナストラ生まれ。行ったことはないが北欧の大自然に囲まれたところらしい。「都会派キミ」と「自然派バルテリ」……
この国の少年たちはブラジルの子がサッカーをするようにまずアイスホッケーをやり、スキーやジャンプなどを始めると聞いた。レーシングカートに夢中になる子は珍しい。サーキットも少なく、長い冬の間は走れない。
だから彼らはイタリアやベルギー、フランスまで遠征に行かねばならない。自主自立精神が自然に芽生えるだろう。速さが目立つとヨーロッパ・カート界で注目され、目利きの関係者の推薦によって、ジュニア・フォーミュラにステップアップするチャンスを手にしていく。先輩ケケ・ロズベルグはJ.J.レートやミカ・ハッキネンを、ハッキネンはボッタスの面倒をみてきた。
第5戦スペインGPでふたりが1コーナーで接触、ライコネンはその場でリタイア。ボッタスは続行できたが39周目にメルセデスPUがブロー。今季初めて両者“ゼロ・レース”、チームメイトとの得点差が広がった。
果たしてキミは遅くなったのか?
ライコネンはベッテル-55点、ボッタスはハミルトン-35点。まだ5戦終了だが小さくないギャップだ。ライコネンは昨年5戦時点でベッテルを13点リード、予選タイム2勝3敗とほぼ対等に近かった。ところがここまで0勝5敗、この落ち込みが得点力低下につながっているのを本人も認める。