F1マシンの完成には、コンセプトの提案から冬のバルセロナテストで実車を走らせることにこぎ着けるまで、実に1年以上の歳月を必要とする。ルノーF1チームのテクニカル・ディレクター、ニック・チェスターへの独占インタビューを基に、F1マシン製作の全過程を「コンセプトを決める」「開発のスケジューリング」「F1マシンのデザインとは」「マシン製作」の4テーマにわたって紹介。
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第4章:マシン製作
その3:パーツ製作
モールド(型)ができ上がり次第、パーツの製作に取りかかる。まずはモールドの内側に何層もの複合素材のシートを貼り付けて行く。貼り付けにはミリ単位の正確な位置取りと折り曲げが求められるが、そこで活躍するのがレーザーによる緑色のラインである。
張り合わされたパーツ素材は、モールドごと真空バッグに収納される。そしてオートクレイブに運ばれる。F1チームのファクトリーは通常、この規模のオートクレイブを2~3基設置している。
複合素材の強度をさらに増すために、パーツはサンドイッチ構造にするのが普通だ。アルミニウムか防弾チョッキなどにも用いられるアラミド繊維をはさんだハニカム構造にすることが多い。
複雑で大きなコンポーネントの場合、いくつかのパーツを組み合わせることになる。その場合は超強力な接着加工を行う。
典型的なのがモノコック製造で、ふたつに分割された内部のバルクヘッドを接合してから、モノコック上部と下部を接着する。そして最後に、サスペンションの取り付けやケーブル類を通すのに必要な、開口部を開ける作業が待っている。これはCADファイルを基に、5軸スライス盤で正確に行われる。
■クラッシュテストと組み立て、シェイクダウン