マクラーレンのチーフエンジニアリングオフィサー、マット・モリスによると、コクピット保護デバイス「ハロ」のチーム内でのテスト中には、「思わず息をのむような瞬間」が何度もあったという。
ハロをシャシーに統合する作業は、全てのF1チームにとって難しい課題であり、マクラーレンも例外ではなかった。ウォーキングの技術スタッフは、このデバイスの統合に向けて、モックアップを使って段階的にテストを進めていくアプローチを採った。
だが、ハロの耐力レベルのテストでかける荷重はきわめて大きく(メルセデスのジェームス・アリソンは、これを「ロンドンバス1台分とほぼ同じ重さ」と表現した)、彼らは想定していなかったほどの規模でシャシーの設計変更を強いられたという。
「とても難しい課題だった」と、モリスは言う。
「耐荷重レベルがものすごく高いんだ。ともあれ、難しいことは最初から分かっていたので、十分な数のテストピースを作れるように、あらかじめ時間と予算はたっぷりと取ってあった」
「もちろん、このテストだけのために、実物と同様のシャシーを作りたくはない。そこで様々なテストピースを作り、そこにダミーのハロ、ハロの一部分、そして実物のハロを取り付けて、荷重をかけた時に接合部分がどうなるかを試した」
「その過程で、いくつかの問題点が明らかになった。だが、そうした問題にも対処できるように、早めに計画を進めてきたので、実物のシャシーの製作に間に合うように解決できた」
「ただ、そのタイミングはかなり際どかったし、全然苦労はなかったと言うつもりもない。特にハロに斜めから荷重をかける静的テストをやった時には、見ていて思わず息を呑むような瞬間が何度もあった。何しろ、ロンドンバス1台分の荷重をかけるのだからね」
「あの荷重の大きさを知った上でテストの進行を見守るのは、それに耐えるように設計されていることが分かっていても、本当にヒヤヒヤするものだった」