F1iのテクニカルエキスパート、ニコラ・カルパンチエが各チームの2018年F1ニューマシンを分析。ウイリアムズFW41のサイドポッドやバージボード周辺など気になる部分をピックアップ。
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・白いフェラーリ!
ウイリアムズは2014年以来ずっと「空気抵抗をできるだけ減らし、エンジンパワーを最大限活かす」空力路線を堅持してきた。しかしそれは同時に、ダウンフォース不足という致命的な欠点に苦しむことでもあった。
FW36、FW37はメルセデスパワーのおかげもあって、未勝利ながら2014、2015年と選手権3位の座に付くことができた。しかしその後はライバルたちに比べて、シャシー性能が相対的に劣ってきていた。
そして今回、テクニカル・ディレクターのパディ・ロウは、まったく新しいコンセプトのマシンを投入した。デザイナーはイギリス人のダーク・デビア。
昨年ロウと同時期にウイリアムズに移籍してきた空力スペシャリストで、現ルノーのエンストンで2008年から13年までジェームズ・アリソンの下で働き、2014年から昨年まではフェラーリの空力責任者を務めている。だからだろうか、真上から見た新車FW41のサイドポッド構造は、まさに昨年のSF70そのままと言っていい。
技術規約ではサイドインパクトストラクチャーは、2本のカーボン製バーを装着することが義務づけられている。1本はサイドポッド基部に、もう1本は空気取り入れ口の上に付けるのが定石だ。
それをデビアはかなり位置を下げ、整流効果を持つデフレクターの役割を担わせた。ハースVF18でも同様の工夫が見られるが、その狙いはサイドポッド下部のスペースを大きく空けることで、その結果フロア下部への空気の流れが最適化される。
サイドポッド開口部の面積が非常に小さくなったのも、FW41の大きな変更点である。空気抵抗を減らす上で、大きな効果が見込めるはずだ。ここまで小さくしても冷却に問題ないと判断できたのは、おそらくサイドポッド付近の空気の流れが非常に整ったものにできたからだろう。きれいな気流なら、より少ない流量でも十分に冷えるからである。
・「ウイリアムズの空力は、大変貌を遂げた」
空気取り入れ口を包み込むデフレクター基部に、台形のパネルが取り付けられているのもフェラーリと同じソリューションである。このパネルはフロントタイヤの真後ろに位置することで、タイヤの回転で生じる乱流の影響からサイドポッド周辺を防ぐことを目的としている。
レッドブルも昨年のシンガポールGPで、同様のデバイスを試している。とはいえ形状としては、フェラーリの完コピといわざるをえない。しかしパディ・ロウは「デビアが去年フェラーリで開発したものを、本人が効果的と判断してウイリアムズにも採用したのだ」と、似ているのは当然という。
「去年の3月に着任以来、彼が明確な開発方向を示したことで、空力部門は大きく変貌を遂げたよ。もしFW41が素晴しいパフォーマンスを発揮するとしたら、その多くはデビアのおかげと言っていい」