2月生まれのガスリーのほうが9月生まれのオコンよりも少しだけお兄さんだが、レースに関してはオコンのほうが1年以上も先輩で、ガスリーは常にオコンの後を追うようにステップアップしてきた。
昨年のマレーシアGPでダニール・クビアトの代役としてガスリーがF1にデビューするときも、オコンは「シーズン途中でのF1デビューは決して簡単なことじゃない。でも、マレーシアはシンガポールほど、最悪な場所じゃない。精一杯、頑張ってほしい」と弟を見守るお兄さんのようにガスリーを見つめていた。
しかし、今シーズンに入ると2人の立場は逆転。2戦目にガスリーが4位に入賞してから、ドライバーズ選手権で先行するのはずっとガスリーだった。
フランスGP決勝レース。スタート直後にロマン・グロージャンと接触していたオコンは少しポジションを落としてしまう。2コーナーを立ち上がって、そのオコンの背後に迫っていたのが、かつての親友ガスリーだった。
「エステバンはマシンになんらかのダメージがあったらしく、火花が散っていた。エステバンは僕を見ていたと思った」と言うガスリーは、オコンを信じて3コーナーでオコンのインに飛び込む。
しかし、次の瞬間、オコンはドアを閉め、行き場を失ったガスリーとクラッシュする。
F1の世界には、友情は存在しない。時に兄弟でもポジションを激しく争う。それがモータースポーツであり、F1だ。
クラッシュしたことは残念な出来事だが、ポジションを守ろうとしたオコンの行為自体はレーシングドライバーとして当然のこと。恥じることはない。堂々とオーストリアGPを迎えてほしい。