21戦中、唯一のナイトレースであるF1第15戦シンガポールGPは、週末のスケジュールがほかのグランプリとはまったく違う。FIAが主催する木曜日の会見の開始時刻は夕方の6時。前戦イタリアGPを制したルイス・ハミルトン(メルセデス)が出席したが、そのハミルトンよりも注目を集めたのが、イタリアGP後にフェラーリを離脱し、ザウバーへ移籍することが発表されたキミ・ライコネンだった。会見にはふたりのほかにケビン・マグヌッセン(ハース)とブレンドン・ハートレー(トロロッソ・ホンダ)も出席して、4人でスタートした。
まず司会者が「何が起きたのか? そして、2019年に向けて移籍を決めたのはどうしてなのかを説明してもらえますか?」と、質問した。
するとライコネンは微笑みながら、こう答えた。
「何があったかは、あなたが知っているはずだ。あなたがこれ以上、何を知りたがっているのかは知らないし、知る必要もない。ただ、こうなっただけのことさ。前に何度も言ってきたけど、こうしたのは僕じゃない。もちろん、その後で最終的に判断したのは僕だけど……」
これを聞いた司会者が「ということは、フェラーリを去ることを決めたのはあなたの判断ではなく、ザウバー入りを決めたのは自分の判断だったというわけですね。なぜ、そうしたのですか?」と、間髪入れずに質問を続けた。
するとライコネンはひと言「そうしちゃ、いけないのかい?」と笑った。
通常、司会者はひとりにつき、1つか2つ質問したら、次のドライバーへの質問に移るのだが、この日は気合満点。ライコネンの返答にこう突っ込んだ。
「だって、フェラーリとザウバーの間にあるパフォーマンスの差はかなり大きいと思うからです」
ライコネンも引き下がらない。
「クルマなんて、全チーム違うじゃないか。今年だって、同じレベルのクルマなんて、そう多くはないよ。将来どうなるかは、やってみないとわからないわけだし……」
こういうやりとりが、このあと2つ続いて、ようやくマイクが移ったのだが、初っ端から、これだけ1人に質問が集中するのは、異例中の異例のこと。それだけ、ライコネンのザウバー移籍は、衝撃的だったということだ。