しかしレッドブル陣営は慌ててタイヤを傷めるようなことはしなかった。
RBR「このまま最後まで行く。まだピットインしていないVET(セバスチャン・ベッテル)は22.1。今のところ彼より少し速い。これ以上速く走る必要はない。万一もう1回ピットストップしなければならなくなったときのことも考えておかなければいけないが、タイヤは大丈夫なはずだ」
どのチームも1ストップで最後まで走り切ることを前提にスーパーソフトをマネージメントしていく。
RBR「左リヤは全てのコーナーの中とトラクションで気を付けろ。最終コーナーはスムーズに走れ」
フェルスタッペンには2番手を走るハミルトンのラップタイムが随時伝えられ、そのギャップはさらにじわじわと広がっていく。
だがどのマシンもタイヤの性能低下は進行し、フェルスタッペンも最後まで無事に走り切ることができるかどうかは際どいところだった。
RBR「1ストップか2ストップか、単純なレースにはならなそうだ。落ち着いて行け、タイヤをいたわれ。後ろでは色々問題が起きている。今のようなペースは必要ない。HAMとのギャップは10.6だ」
VER「まだ最終セクターではプッシュしていないよ」
RBR「低速コーナーではフロントもリヤも気をつけろ。すごく良い仕事をしているよ」
VER「HAMのタイヤは?」
RBR「フロントタイヤが“Angry”なようだ。タイヤのフィーリングはどう?」
VER「ちょっとマシだね。でもはっきりとは分からない」
RBR「OK、もう1回ピットインするかどうかがクリティカルだ」
最も元気な走りを見せるベッテルが35周目にリカルドをパスして3番手に上がると、39周目にはタイヤに苦しむハミルトンまでオーバーテイクして2番手に浮上してきた。しかしそれでもレッドブル陣営は冷静だった。
RBR「VETがHAMをパスしたぞ。しかし君は反応する必要はない。タイヤセーブに戻れ。VETとのギャップは14.9。ペースは20.5だがこれはDRSを使ってのタイムだ」
その予想通り、ハミルトンだけでなくベッテルもフロントタイヤのバイブレーションが悪化し、とても最後まで走り切れる状況ではなくなってしまった。47周目に彼らがピットインすると、後方に大きなギャップができたフェルスタッペンは安全策で“フリーストップ”をすることができた。
これであとは最後まで安全に走り切るだけでよかった。
55周目、自己ベストを更新するフェルスタッペンをレースエンジニアのジャンピエロ・ランビアーズがいさめる。
RBR「セクター2がパープル(最速)だったぞ。不必要だ、必要ない」
VER「はいはい」