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F1 ニュース

投稿日: 2021.12.02 13:44
更新日: 2021.12.02 13:57

【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第19回後編】ミックの走行データのおかげで戦えたカタールGPは「会心のレース」

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F1 | 【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第19回後編】ミックの走行データのおかげで戦えたカタールGPは「会心のレース」

 2021年シーズンで6年目を迎えたハースF1チームと小松礼雄エンジニアリングディレクター。3連戦の最後は初開催のカタールGP。ニキータ・マゼピンがシャシーにダメージを負い、データ収集はミック・シューマッハーひとりに任された。これまで金曜日の走りに課題を抱えていたシューマッハーだが、今回は「FP2の走りがあったからこそいいレースができた」と評価できるほどの働きをしてくれたという。

 コラム第19回は、前編・後編の2本立てでお届け。後編となる今回は、カタールGPの現場の事情を小松エンジニアが振り返ります。

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2021年F1第20戦カタールGP
#9 ニキータ・マゼピン 予選20番手/決勝18位
#47 ミック・シューマッハー 予選19番手/決勝16位

 最後の3連戦、最終戦は初開催のカタールGPです。ロサイル・インターナショナル・サーキットはほとんどのコーナーが中高速コーナーです。イスタンブールのターン8のように長いターン12〜14は時速250kmを超える高速コーナー。クルマにダメージを負ったドライバーも多かったターン4〜5も時速200km以上で通過します。唯一の低速コーナーはターン6で、ここは時速100kmまで最低速度が下がります。また、このコースには起伏がほとんどありません。個人的には起伏があるサーキットは乗る側にとっても観る側にとっても醍醐味があると思うので、少し残念です。語弊があるかもしれませんが、インテルラゴスのようなテクニカルなコースと比べて、ドライバーにとってそれほど難しいコースではないかなという印象でした。

 また路面も荒くないし、海風による劣化なども感じませんでした。おそらくあまり使われていないというのも理由のひとつでしょうね。もちろんFP1の走り始めはあまりいいコンディションではなかったですが、それも想定内でした。

ミック・シューマッハー&小松礼雄エンジニアリングディレクター(ハース)
2021年F1第20戦カタールGP ミック・シューマッハー&小松礼雄エンジニアリングディレクター(ハース)

 そんなカタールで問題だったのは、赤白縁石の外側にあった緑の縁石です。FP1ではニキータがターン4でスピードを乗せて突っ込みすぎてアウト側に膨らみ、ターン5に向けて緑の縁石を跨いでコースに戻った際にシャシーを壊してしまいました。緑の縁石自体にそれなりの高さはありますが、コースから外方向に出ていく分には傾斜もなだらかです。反対に外側からコースへ戻ろうとすると、角度が急になっているので、そのぶんクルマへの衝撃が大きいのです。

 オンボード映像で見る限りはそれほど大きな影響があるようには見えないかもしれませんが、実際はかなり大きなダメージで、これが原因でニキータはシャシーを交換することになりました。予選でも同じ場所でフロントウイングを壊しましたし、レース後にニキータのマシンをチェックした際にもシャシーとフロントウイングにさらなるダメージが見つかりました。フロントウイングはノーズと羽根をつないでいる部分にかなりダメージを負っており、もしこれがレース中にわかっていたら、ウイングが落ちてしまう恐れがあるのでピットインしてウイングを交換していたと思います。

 FP1でシャシーを壊したニキータはFP2を走れず、続くFP3ではシャシー交換に関連した電気系の問題でエンジンにミスファイアが出て、このセッションも走れませんでした。ですから予選はほぼぶっつけ本番の状態だったので、ミックとの差はどうしても開いてしまいました。さらに金曜日と土曜日では風向きもまったく変わっていて、ターン2、4、5は向かい風に、高速のターン12、13も向かい風でクルマのバランスがガラっと変わりました。FP3を走れていないので予選前にこれも経験することができなかったのは大きなマイナス要素です。しかし、その理由は元を辿ればニキータがFP1でシャシーを壊したことなので、本人もそのことをわかっていて反省していました。

ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第20戦カタールGP ニキータ・マゼピン(ハース)

 フリー走行をほとんど走れていないことを考えると、レースでは比較的よくやってくれました。ニキータはミディアムタイヤ、ミックはソフトタイヤでスタートし、第1スティントではミディアムタイヤを活かしてなんとかミックについていくことができたので、これはある程度評価してもいいと思います。

 事前にハードタイヤは使わないと決めていたので、あとはどのタイミングでソフトに交換するかだけです(あとで詳しく書きますが、1ストップにするのか、2ストップにするのかを臨機応変に変えるつもりでレースに臨みました)。ピットストップを考え始めたタイミングではまだ1ストップ戦略の方が早く走れるという予測でした。しかし1ストップにすると、先にピットインした2ストップ勢に抜かれる際のロスと青旗によるロスが大きいのが問題で、ニキータは実際30周目の時点で、すでに22周目にピットインしていたミックに追いつかれてしまいました。

ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第20戦カタールGP ニキータ・マゼピン(ハース)

 チームとしては、ニキータがこういう状況に陥るのは避けなければいけないことでした。ピットストップをしていないのに、1回分のピットストップと同じくらいのロスをコース上でしてしまったのは、レース前の予測の精度が足りなかったからで今回の反省点です。結局ニキータは31周目にソフトタイヤに交換し、その後も青旗でかなりタイムをロスしてしまいましたが、レース終盤にフリーエアーで走れるようになってからはいいペースで走っていました。これも評価していいと思います。

 メキシコGPの予選ではニキータといろいろありましたが、ブラジルGPの前に彼とはよく話しました。ここ2戦では少しアプローチがよくなったと感じています。カタールではクルマを壊してしまいましたが、彼のレース内容自体は悪くなかったと思います。これからも自分のやるべきことに集中して、最後の2戦でいいレースを見せてほしいです。

ニキータ・マゼピン(ハース)
2021年F1第20戦カタールGP ニキータ・マゼピン(ハース)

■今までの反省が活きた週末。ミックの走行データがあったからこそ戦えた日曜日


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