ホンダF1復帰2年目から総責任者の役割を担っている長谷川祐介氏が、2016年シーズンを一問一答で振り返る前編。16年はパフォーマンスアップに関してロン・デニスと相当ケンカしたという長谷川氏。信頼性とパフォーマンスの向上を目指す中、長谷川総責任者は16年シーズンをどのように対応したのだろうか。
* * * * * * * * * *
――参戦初年度となった2015年は信頼性不足に悩まされましたが、2016年は信頼性が大幅に向上しました。どのようにして、信頼性を回復させたのでしょうか。
長谷川祐介(以下長谷川):15年に悩まされた問題がひとつではなかったので、それらすべてを総点検して信頼性を立て直しました。たとえば、信頼性を確認するプロシージャー(手続き)を変えたり、レースに投入するパワーユニットのプロセスの考え方を整理しました。15年は、とにかく時間がない中で間に合わせるしかなかったので、そういったところまで手が回らなかったというのが実情でした。その結果、つまらない問題が起きて、さらにその対応に追われ、まるで自転車操業のような状態で戦うしかなかった。そこで16年は、まずは完走できるというベースを作りました。そして、そのためには多少パフォーマンスを犠牲にしてもいいという考えでスタートしました。私が総責任者になって最初の仕事となった16年2月のウインターテストでは、『性能のアップデートは、信頼性をきちんと確認してからでも遅くはない』と、スタッフのみんなと確認しました。シーズン中も、闇雲に新しいモノを投入しなかったのは、そのためです。
――信頼性に関して、マクラーレン側の反応はいかがでしたか。
長谷川:マクラーレンにとってはホンダが信頼性を向上させることは当然のことで、そのうえでパフォーマンスも向上してほしかったと思います。ですから16年、私はロン(デニス/前マクラーレン・テクノロジー・グループCEO兼会長)さんと相当ケンカしました。たとえば、中国GPではエンジンのパフォーマンスの悪さが浮き彫りになったということもあって、ロンさんは『信頼性なんか気にしないで、もっとパフォーマンスを上げろ』って言ってきました。でも、それはそれだけホンダの信頼性が上がったから言ってきた要求であって、もし16年も15年と同様にトラブルを起していたら、そんなこと(「信頼性なんか気にしないで」)は言ってこなかったと思います。
――「相当ケンカした」ということは、それ以外にも、何かあったんですか。