FIA WTCC世界ワールドツーリングカー選手権のプロモーターであるユーロスポーツ・イベントと、TCRインターナショナル・シリーズを運営するWSC Ltd.の両者が、2018年シーズンに向け長らく協議していた話し合いが最終的に合意に達したとTouringCarTimesなどが報じている。これによりWTCCは来季からTCR規定を導入を決め、TC1規定は事実上終焉する見通しだ。
2016年末にシトロエンとラーダの両ワークスが撤退して以降、WTCCはシリーズ存続に向けマニュファクチャラーの関与を模索し、選手権への長期コミットを取り付ける必要に迫られていた。
今季はボルボとホンダの2ワークスが残るものの、開発費やランニングコスト面でも高価な現行TC1規定マシンは、プライベーターチームには「負担が大きすぎる」と不満の声が挙がっており、WTCCはシリーズとしてグリッドを埋める方法を検討する必要が出てきていた。
その一環として、DTMドイツ・ツーリングカー選手権や日本のスーパーGT500クラスが採用する“クラス1”規定を2019年から採用することをオプションとして検討した経緯があったものの、この方針はマニュファクチャラー、プライベーターともに関心が集められず、昨年末の時点で却下されていた。
そこで浮上してきたのが、ツーリングカーの新たな“ムーブメント”として瞬く間にグローバル展開を成功させたTCRシリーズだ。
このTCR規定をWTCCが採用することにより、同じテクニカル・プラットフォームを採用する2つのグローバルな選手権が並存することになるが、これはチームにとっても視聴者にとっても効率的でないとの判断からシリーズを統合。
これにより参戦車両が続々と拡大を見せるTCR規定と、ユーロスポーツ・イベントのマーケティングと放送技術のノウハウを組み合わせることで、世界規模で開催されている新たなツーリングカー選手権が合流するという画期的な動きへと繋がった。
報道によれば、この契約はまだ最終的な締結には至っていないと見られるが、WSC Ltd.側がFIA(ユーロスポーツ・イベント)に対し2年間のTCR規定使用承諾契約を結ぶ見通しとなっている。
これにより、新たな選手権はFIA世界選手権ステータスではなく、FIAワールドカップ格式として、新たに“FIA WTCR”の名称を採用すると噂されており、マニュファクチャラーによるワークスチームでの参戦は禁止され、現在の各TCRシリーズのようにカスタマーレーシングチーム単位での選手権運営が予定されている。
この歴史的な2大ツーリングカー・シリーズの合併に向け、両シリーズに参戦する多くのドライバーとチームからも賞賛の声が挙がっており、この週末にそれぞれ開催されていたWTCCマカオ・ギアレース、TCRインターナショナル最終戦ドバイのパドックでは、早くも歓迎の声が聞かれた。
「僕は以前から言っていた通り、この動きは両選手権にとって“ウイン-ウイン”の結果だと思う」と語ったのは、WTCC参戦経験もあるクラフト-バンブー・ルクオイルのぺぺ・オリオラ。
「WTCCはTC1カーが僕らの望みとは違うものであることを図らずも証明してしまった。なぜなら、それはとても高価だからだ。ルクオイルやレパード・レーシングのように小規模なスポンサーを持つチームにとっては、非現実的な世界でしかなかったからね」
同じくWTCCドライバーとして活躍し、2009年にはワールドチャンピオンにも輝いているガブリエル・タルキーニも「私にとって、それは非常に良いニュースだ」と語った。
「それは良い一歩であり、TCRの良い部分とWTCCの良い部分を重ね合わせれば、両選手権のレベルは飛躍的に高まることになるだろう」