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海外レース他 ニュース

投稿日: 2018.05.28 14:50
更新日: 2018.05.28 14:51

琢磨インディ500密着:激励に奮闘するも無念のクラッシュ「勝つのがウィルで良かった」

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海外レース他 | 琢磨インディ500密着:激励に奮闘するも無念のクラッシュ「勝つのがウィルで良かった」

 佐藤琢磨にとって9回目のインディ500となる第102回インディアナポリス500マイルレースが始まった。

 プラクティスではクルマのセッティングに悩まされ続けていたが、金曜日のカーブデイでようやく光明が見えてきていた。

 レースを前に、今はF1のトロロッソ・ホンダでエンジンのテクニカルディレクターを務める田辺豊治氏から琢磨へビデオのメッセージが届いた。田辺氏は昨年までHPDでテクニカルディレクターを務め、昨年インディ500で勝利の美酒に酔った仲だ。

 インディ500の同日にレースに行われるモナコから田辺氏はメッセージを寄せていた。田辺氏は「琢磨さん。ご無沙汰しています。皆さんにご挨拶もせずに急にF1に来てしまい、大変申し訳なく思っています。5月が来ました。インディ500は長いレースですので、うまく組み立てて、去年のように感動を届けていただければと思います。我々もモナコのレース頑張ります。そしてモナコのレースが終わったら、パドックでインディ500を見て琢磨さんを応援しようと思います。頑張ってください」

 田辺氏の表情は昨年を懐かしく思いながら、琢磨へ寄せる期待をあらわにしていた。琢磨はそのビデオを見て「ありがとうございます!うれしいなぁ~」と素直に喜んだ。

「田辺さん。応援メッセージありがとうございます! 田辺さんがいなくなってから、こっちはなかなか大変です。新しいエアロパッケージになってゼロからやらなきゃいけないことが多くて、ちょっと苦労しています。しかしレースは田辺さんの言うとおり、しっかり組み立てて最後にスピードを見せれるようにしたいと思っています」

「田辺さんがトロ・ロッソに行ってから、パフォーマンスも上がってきていますし、モナコらしい特性を生かして頑張ってください。僕もインディから応援してます」

 琢磨は笑顔でビデオメッセージを送り返した。

 昨年はインディ500制覇という偉業を成し遂げたふたりが、今年は別々の道を進むことになったが、互いにエールを交わし、それぞれの健闘を祈っていた。モナコではトロロッソ・ホンダのピエール・ガスリーが7位に入賞し健闘を見せた。その波に乗って琢磨も好結果を導き出したいところ。

 しかも今回もホンダの八郷社長を始め、アメリカホンダの御子柴社長らホンダの首脳陣がインディ500に応援に駆けつけた。今年のロングビーチに続いて2度目だ。

八郷社長をはじめホンダ首脳陣が琢磨を激励

 琢磨のインディ500連覇に並々ならぬ期待が寄せられているのは確かだった。しばらくインディ500の連覇は、2001年と2002年のエリオ・カストロネベス以来成し遂げられていない。達成すれば16年ぶりの偉業だ。

 もちろん、そのカストロネベスも最多タイ記録に並ぶ4勝目を狙って、今年のインディ500に出場しているし、このレースを引退レースと決めたダニカ・パトリックもいる。全33台のドライバー誰もが、その栄冠をつかむために、すべてを捧げていた。それがインディ500だ。

パレードランを終え、いよいよレースが幕を開ける

“Ladys and Gentelmen, Start your engines!”世界でもっとも知られたこのコールと共に一斉にエンジンに火が入り、レースはスタートを切った。

 琢磨はスタートでポジションをひとつあげたが、その後にロバート・ウィケンスに抜かれ、またしばらくするとカルロス・ムニョスにも抜かれジリジリとポジションを下げた。

「アンダーステアがひどくてどうしようもなかった。コクピットの中でウエイトジャッカーやあらゆるアジャストはしたのだけれど、もうそれも使い切ってしまった」と振り返る。

ロバート・ウィケンスと競る佐藤琢磨

 33周目に最初のピットインをすると給油とタイヤ交換を済ませ、フロントウイングを上げてコースに戻った。最初のスティントに比べればペースも戻り、16番手に順位を戻して、さぁこれからと言う時だった。

 マシンのハンドリングに悩まされていたジェイムズ・デイビソンがスロースピードのままレコードラインを走っていたところに、琢磨が追突!

 琢磨は右フロントから接触してダメージを負いマシンを止め、その場でリタイアとなった。

「ウィケンスがデイビソンを抜き、僕もアウト側からかわそうとしましたが、ダメでした」と無情にもわずか47周で今年のインディ500は終わってしまった。

 失意のままガレージに戻り戦況をエンジニアと見ていた琢磨。レイホール・レターマン・ラニガンのチームメイト、グラハム・レイホールとオリオール・セルビアは健闘し、ふたりともピットのタイミングさえ合えば、優勝も狙えたかもしれなかった。
 
そして琢磨にとってもうひとつ嬉しかったことは、仲の良いペンスキーのウィル・パワーが優勝したことだ。パワーが表彰されているビクトリーサークルに自ら出向いてパワーを祝福した。

「ウィルとはスタート前に話をしていたし、今日の彼は速かった。勝つのが彼で良かったです」

 インディ500ディフェンディングチャンピオンの肩書きを、友人のパワーに譲った琢磨は、心機一転。来週末のデトロイトのレースに臨む。

「デトロイトはRLLRも得意にしているし、僕も相性の良い好きなサーキット。気持ちを切り替えて頑張りたいですね」

 デトロイトで琢磨が見事に甦るかどうか期待したい。


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