いよいよ5月3〜5日に開幕するDTMドイツ・ツーリングカー選手権。その開幕を前に、ドイツはミュンヘン在住のモータースポーツライター・池ノ内みどりが、アウディRS5 DTMで参戦するチームの発表会をぜ〜んぶ取材しましたので、その様子をお届けしましょう。日本では近年、チーム単位での参戦体制発表会はあまり多くはなく、ファン向けイベントも兼ねていることも多いですが、ヨーロッパの発表会はどんな雰囲気なのでしょうか……!? WRTに続く2チームめは、名門チーム・ロズベルグです。
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■第2回 チーム・ロズベルグ編。ニコ様からのメッセージも
アウディのDTMチームファクトリー訪問の第二弾は、チーム・ロズベルグです。
F1やDTMで有名なホッケンハイムリンクから西へ約40km。ノイシュタット・アン・デア・ワインシュトラーセ（ストリート）という地名そのものの、ワイン畑が広がるのどかな田舎道を抜けると、そこに黄色いラインがオシャレな外観のチーム・ロズベルグのファクトリーがありました。
ご存知の方も多いと思いますが、1982年にF1のワールドチャンピオンを獲得したケケ・ロズベルグが1994年に創立したチームで、1995年からDTMに参戦しています。2006年からはアウディのワークスチームになりましたが、その前はオペルやメルセデスで活躍していました。旧DTMがお好きな方にとっては、このオペル・カリブラの印象が強いのではないでしょうか？
その後は、1998年のスーパーツーリングカーカップ時代にはニッサン・プリメーラで参戦。日本でお馴染みのミハエル・クルムが1年間、このチーム・ロズベルグに在籍していたそうです。またドイツで人気のGT3レース、ADAC GTマスターズでは元F1ドライバーで、いまや政治家を目指す山本左近さんも1年間このチームから参戦していたんですよ！ その時のヘルメットもまだ大切に残されていました。
最近のファンの皆さんにはこちらの方がお馴染みと思いますが、ケケ・ロズベルグのひとり息子と言えば、2016年のF1ワールドチャンピオンのニコ！ なんと、この日のメディアセッションでは彼も訪れており、私たちメディアと一日みっちり時間を割いてくれました。ニコはテレビで観るよりも気さくで、フレンドリーでしたよ。
ニコ自身は8歳の時に初めてDTMを訪れ、子供の頃から馴染んだDTMが今年はいよいよスーパーGTと交流戦で戦うとのことで、とても楽しみであると同時に、将来のさらなるグローバル化に期待したいと語ってくれました。「日本のモータースポーツファンは世界一クレイジーで最高！」とニコ。
「DTMとスーパーGTの交流戦で、チーム・ロズベルグが11月に富士を訪れた際にはぜひ歓迎してほしいし、応援してくれると嬉しいな」と日本の皆さんにメッセージを頂きましたよ。
ちなみに、ランチタイムにはアジア料理のフィンガーフードでおもてなしを頂いたのですが、ニコのお皿には山盛りの春巻きが（笑）！ 横目でチラチラ観察していたのですが、ニコはお代わりも含めて春巻きのみ食べていました。好物なのかしら？
■チリひとつないファクトリー。勝つための道具が満載！
チームファクトリーは、ふだん絶対に撮影禁止なのですが、今回はメディアを招待してくださったこともあり、撮影をご了承頂きました。DTMチームがふだんはどんなところでお仕事をされているのか興味がありましたので、とても良い機会でした。
ヨーロッパのトップチームはどこもそうなのですが、こちらチーム・ロズベルグもホコリひとつなく、ピッカピカ。チーム代表のアーノ・ツェンセンによると、ご自身の過去の経験からも、エンジニアやメカニックの待遇面で、シーズン中のみの季節雇用ではいいレースができない……との考え方で、全員が正社員なのだとか。
アウディスポーツ代表のディーター・ガスが元TMG（トヨタ・モータースポーツGmbH）等でF1エンジニアをしていただけに、エンジニアはF1経験者が多く、特に多いのが元TMGから。そして、ニコのF1を担当されていたエンジニアも在籍しています。
ファクトリーの壁にはニコがかつてドライブしていたF3のマシンやカートが色んなところに飾ってあります。
ファクトリーの中にはフィットネスジムも兼ね備えており、毎週木曜日と金曜日は専属のフィジオが来て、チームクルーのトレーニングをしています。ファクトリーの裏手にはピットストップ用のお手製マシン（！）が置いてあり、毎日必ず何度も練習をするそうです。ちなみにこのピットストップ用のマシンはなんと、ピアッジオを改造したものらしいのですが、ステアリングを見るとダイハツのものが着けてありました。軽トラの流用なのかな……!?
テストがかなり少ないDTMでは、ドライバーがレース以外で実車をドライブする機会は極端に少ないので、シミュレーターは大事なツールのひとつでもあります。ドライバーのレネ・ラストは、ファクトリーに来ると9時から開始して、ランチタイムを挟んで18時までみっちりシミュレーターをやって、担当エンジニアと一緒に解析をすると教えてくれました。そしてコレ、ボディはRX-8ですね……。
エンジニアが別室からモニターでチェックし、実戦同様に指示を出します。また、シミュレーター用に別途ピットレーンスタンドも用意されており、複数のエンジニアが同時にチェックできる体制が整っています。
最後はトランスポーター内の見学会。ドライバーの個室や会議室、チーム幹部らの部屋等、ふだんは見ることができないところもたくさん見せていただけて大満足でした。
チーム・ロズベルグの皆さん、どうもありがとうございました！
