佐藤琢磨にとって10回目となるインディ500、予選結果は14番手だった。昨年の予選16番手から順位はそれほど変わらなかったが、4日間行なわれたプラクティス中からレーストリムでの走りに好感触を持っており、カーブデイのファイナルプラクティスを終えると、「去年より全然いい。2017年に次ぐ2番目の出来です」と表情には力がみなぎっていた。
過去9回のインディ500での琢磨は、2012年にはファイナルラップにダリオ・フランキッティにアタックし、優勝まであと一歩に迫った。4シーズンを過ごしたAJフォイトのチームでもレース終盤に追い上げを見せ、17年にはエリオ・カストロネベスとの勝負を制してついに優勝。最も勝つのが難しいと言われるレースの戦い方、勝負の仕方を着々と身につけてきていた。
インディ500というレースは、一度勝つと、勝てずにいたときよりもさらに勝ちたい欲求が強くなるという。今年の琢磨のファイナルプラクティスを終えての表情は、「また優勝争いができる。2勝目が狙える」という手応えが表れたものだった。
昨年は序盤のアクシデントで早々に終了となった。超スロー走行を続けていたジェイムズ・デイビソンが琢磨の目の前で大きく減速。避けようもなかった。今年はより冷静に、慎重に第1スティントを戦う気構えの琢磨だったが、1回目のピットストップで右リヤホイールがきっちり装着されず、周回遅れに陥った。
再ピットインを強いられ、2周遅れの31番手に。1995年インディ500でのジャック・ビルヌーブのように、2ラップダウンからの優勝もあるにはあるが、琢磨が厳しい状況に置かれたことは間違いなかった。
■脅威の燃費セーブでド終盤にチャンスを手繰り寄せた
73周目からの2回目のイエロー中にまずはラップダウンを1周に減らす。だが、そこからはグリーンの状態が続いた。できることは、燃費セーブを続け、チャンスを待つことだけ。琢磨は先のイエロー中に2度ピットイン。この作戦が効いたことと琢磨の懸命の努力で、次のピットを113周目(グリーン下)まで引っ張った。同じ作戦だったカストロネベスよりも3周長い。
このあたりから、トップ争いはシモン・パジェノーやアレクサンダー・ロッシなどのスピード勝負組と、スコット・ディクソンやフェリックス・ローゼンクヴィストなどの好燃費組の勝負になりそうな様相を見せ始めていた。
138周目、ピットロードでマーカス・エリクソンがクラッシュし、3回目のフルコースコーションに。スピード勝負組はピットストップをすでに終えており、燃費セーブ組にとっては最悪のタイミングだった。
琢磨はここでリスタート前に給油。ついにリードラップに戻り、18番手でリスタートを迎えた。タービュランスを浴びながらも、ジャック・ハービー、予選3番手のスペンサー・ピゴットをパス。燃費セーブにも努め、177周目までピットのタイミングを伸ばしていた。ここで最後の給油とタイヤ交換を終えてコースに復帰。すると、直後に多重クラッシュが発生し、4回目のイエローに。
ピットに入り損ねて大幅ポジションダウンがほぼ確定したピゴットには最悪だったが、琢磨にとっては絶好のタイミング。これで琢磨は7番手に浮上した。ひとつ前のピットストップ終了時は18番手。11ポジションのジャンプアップだ。