ハンガリー出身のダニエル・ナジー(ヒュンダイi30 N TCR/BRC Racing)が、先日に開催された『TCRヨーロッパSIM Racing』の開幕戦スパ・フランコルシャンで大躍進を演じ、プラクティスで最速を記録すると、予選、決勝2ヒートを完全制覇する“クリーンスイープ”を達成した。
当初発表された25台のエントリーリストから3台減少の22台が集結した仮想スパを舞台に、TCRヨーロッパ・シリーズ初のヴァーチャル戦が5月2日(土)に開催された。
人気レースシムの『Assetto Corsa Competizione(アセットコルサ・コンペティツィオーネ)』を採用した同イベントは、本物のシリーズに参戦するプジョー308TCRやルノー・メガーヌR.S.TCRなど、TCR規定ツーリングカーの主要車種を網羅。各イベント成績優秀者には、対応する現実のレースでもヨコハマタイヤ2セットが無償供給されるプライズも用意された。
その記念すべき初戦で勢いを見せたのは、ハンガリー出身のWTCR世界ツーリングカー・カップ経験者ナジーだった。彼はプラクティスからベストタイムを奪うと、レース1に向けた予選でも幸先よくポールポジションを獲得してみせた。
一方で、シリーズ実力者たちのうち何人かはシステム上のトラブルや諸問題に悩まされ、DG Sport Compétitionのオーレリアン・コンテ(プジョー308TCR)や、同じくプジョーのジュリアン・ブリシュ(JSB Compétition)などは、回線のラグが大きすぎたために予選通過を逃してしまう一幕も。
またトム・コロネル(FK8ホンダ・シビック・タイプR TCR/Eat My Dust)やマーティン・ライバ(FK8ホンダ・シビック・タイプR TCR/Brutal Fish Racing)らも、システムの問題でレース1に遅れて合流する形になるなど、Simイベントに付きもののトラブルに見舞われた。
そんなライバルたちの苦労を尻目に、2019年にも現実のスパでシーズン唯一の表彰台を獲得していたナジーは、スタートから順当にホールショットを奪うと、フロントロウに並んでいた同じハンガリー人のベンス・ボルディズ(セアト・クプラTCR/Zengő Motorsport)を引き離し、すぐに快適なリードを手にする。
その後方では、WTCRレギュラーに昇格した2018年シリーズ王者のミケル・アズコナ(セアト・クプラTCR/PCR Sport)が1コーナーでジミー・クレーレ(プジョー308TCR/Team Clairet Sport)をかわし3番手に浮上、後方から迫るジル・マグナス(アウディRS3 LMS/Comtoyou Racing)と熾烈な表彰台争いを展開する。
2台は8ラップスプリントの前半戦で好バトルを演じたものの、4周目のレ・コンブを抜けたところで接触し、最終的にアズコナはタマーシュ・テンケ(セアト・クプラTCR/Tenke Motorsport)に敗れ4位止まり。マグナスはトップ10圏外の11位に終わってしまった。これによりナジー、ボルディズ、テンケの並んだトップ3は、全員がハンガリー出身者という”eシリーズ強国”を体現するリザルトとなった。