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2017.01.11

一般社員が感じたレースの苦楽、そしてホンダの社風:ボンネビル挑戦記後編


S-Dreamはピットからスタート位置までオリジナルで作成したカーゴで移動

 ホンダがS660の軽自動車用のエンジンで自社の四輪最高速を更新することとなった、アメリカのユタ州で開催されたFIA公認イベントのMike Cook’s Bonneville Shootout。わずか1年足らずの期間に、未知の領域に挑んだ山あり、谷あり、涙ありの本プロジェクト。

 1年限定の公募で集まった16人のスタッフが手探りの中、約半年でレース参戦マシン、S-Dreamを作り上げた前編に続き、後編はいよいよ、レース開催地アメリカへ。その奮闘を開発責任者、蔦佳佑エンジニアのインタビューをもとにお届けする。

☆  ☆  ☆  ☆

 S-Dreamのマシンを完成させた後、マシンはアメリカ、ロサゼルス近郊にあるHPD(ホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント)でスペースを借りて、メンテナンスなどの作業を行うことになった。HPDからユタ州にあるボンネビルのレース会場までは、直線で840km。クルマで約10時間の距離だが、スタッフの行き来は飛行機を使用することになる。早速、本番の前哨戦となる「マイク・クック・テスト&チューン」にS-Dreamは参加したが、ここで思わぬハプニングが起きた。

「日本で走ったときは問題なかったのですが、ボンネビルのテストで走ったらドライバーの宮城(光)さんが『全然、前が見えない』と言うんです。というのも、ボンネビルは一面、塩湖なので景色が真っ白。もともとS-Dreamの視界は狭いですが、日本のテストコースで走ったときはアスファルトは黒くて白線やガードレールがあり、周りに緑の木があるので方向は認識できて真っ直ぐ走れました。でも、ボンネビルでは周りに何もなくて真っ白なので、少し方向が変わっても景色はまったく変わらない。方向感覚が分からなくなってしまうんです」と蔦エンジニア。

 事前の動画や資料などで、走行コースには1/4マイルごとにパイロンが置かれていたことは確認していたが、この時は1マイルごとに間隔が広がっていたのも、進路方向を狂わせる原因になった。

「宮城さんは実際、コースの右にあったパイロンを左側だと錯覚するくらい、方向間隔が分からない状況でした」

 ボンネビルは、減速区間も合わせて約10kmの直線コースで最高速を競う。方向感覚が分からないまま、400km/hでまっすぐ10km走行することは、想像するだけでも困難な状況だ。

「外にカメラを付けて、コクピット内に液晶モニターを設置して走るというのも試したのですが、どうしてもモニターに映るのに遅れがあるし、400km/hで走行していてモニターを見ている余裕はない。“このままでは走れない”となりました。でも、テストができるのはこのタイミングだけで、エンジン、サスペンションのセッティングなど確認しなきゃいけない項目はものすごくある。仕方ないので、その場はカウルを外して走ることにしました。塩湖で塩害があるのでカウルの代わりに急きょ、段ボールで車体を覆って走りました」

テストでは視認性のトラブルでカウルを外して走行。塩害を防ぐため、段ボールで各部を保護した
テストでは視認性のトラブルでカウルを外して走行。塩害を防ぐため、段ボールで各部を保護した

 さらに、このテストで大きな問題に直面することになった。目標の450km/hどころか、速度は250km/h程度しか出せなかったのだ。


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