翌日の3日(木)は朝からドライバーたちがシェイクダウンへ向かいますが、のんびり起床したい私はしっかりと朝食を摂ってから、宿周辺を散歩。湖畔には蟻っぽい石ころオブジェがぽつり。
宿の所在地はラウカーという地域内なので、金曜日のSS2/6“ラウカー”の目と鼻の先だったりします。せっかくのSS近辺の宿なので、午前中はステージまでレッキ(下見)に赴くことに決定。
翌日にはラリーカーが走行するステージを走行していると、可愛らしいギャラリーに遭遇し、思わずクルマを停めてしまいました。引率の女性に話を伺うと、地元の4ファミリーの子供たちの集まりだそうです。
サマーホリデー期間中に開催されるWRCは、彼らにとっては夏の風物詩なんでしょうね。カメラを向けると恥ずかしそうに視線を向けるので、ラテン系とは違うシャイな国民性が何とも言えません。
お昼頃にはシェイクダウン終わりのドライバーが帰ってくるサービスパークへ。この日はチケット購入者のみの来場ですが、変わらず多くのお客さんで賑わいを見せていました。
そんななか、より一層盛り上がってる箇所が。『なんだなんだ?』と近づいて見ると、なんと観戦エリアのど真ん中にインタビューエリアが設置されているではないですか。
お客さん、ドライバー、メディアの隔たりの薄さがラリーの特徴ですが、これ程までにサービス精神の高いレイアウトを施す国を見たことがないので、イベント側の粋な計らいに感心しきりです。
ここまで近ければ、目当てのドライバーのサインゲットも楽勝ですね。オリバー君も、年々と頼もしい顔つきになっています。いずれ、お父さん(ペター・ソルベルグ)に負けない、ノルウェー大応援団を各国で再現して頂きたい。まずはWRCチャンピオンになることが最大の条件でしょうか。
競技初日となるこの日は、ユバスキュラの中心街北部に位置するスタジアム内でSS1が行われるため、サービスパークから徒歩で街中を突き抜けて移動します。ラリー・フィンランドには何度か訪れていますが、初観戦の年以降は街中を訪れることがなかったので、移動ついでに15年ぶりのプチ街ブラも。
フィンランドでは数少ないエスプレッソマシーンを設置しているカフェへ。実はフィンランドはコーヒー消費量世界第1位。お茶に近いフィルターで落とした薄いコーヒーを、まさにお茶のように消費する国なので、消費量が高いのは当然?
フルボディのしっかりとした味が好みの私は、フィンランド入国以降、極度のカフェイン不足だったので、まさに駆け込んだ寺。ここで写真映えのするフラットホワイトを頼むべきだよね、と思いながらもやっぱり画的に地味なアメリカーノを頼んでしまう、欲望に抗えない私……。
ジェラートはせっかくのフィンランドなので、ブルーベリーを真っ先にチョイス。店員さんに、ストロベリーとマダガスカルバニラのどちらかで迷っているから試食させて、とお願いすると自信満々に「試食するまでもない、君は間違いなくバニラを選ぶよ。だってこのバニラは特別だから」と。結局試食を提供して頂きましたが、何故そんなにハードルを上げるのか……。試食した結果、すみませんストロベリーにします。明らかなガッカリ顔をされましたが、どんな顔をされても美味しいと思う方をチョイスしてしまう、空気を読もうとしない私なので許してください。
■やはり母国出身ドライバーにはひときわ大きな声援
カフェインと糖質、脂質でエネルギーを注入し、いざSS1“ハルユ”へ参ります。全長3.48kmと小さいSS。「ここだ!」と思うポイントまでひたすら歩きましたが、見晴らしの良い場所がなかなか見つからずで、諦めかけていたところ、運よくひとり分空いていたスタンドに座ることができました。一人行動で良かったと思う数少ない瞬間です。
お隣に座るイタリア人のお客さんグループをみると、どこかで見たことのある顔ぶれ。どのイベントで会ったか定かではないですが、声をかけると、なんでもラリー・モンツァのとあるSS近辺に住む方々だったので、2021年のモンツァ話に花を咲かせました。
SS1のスタートが19時ということですが、WRC2クラスからのスタートなので、多数のお客さんが目当てとしているメインドライバーたちの登場まで1時間程の待ち。そんな時は手持ち無沙汰になりがちなので、周辺のお客さんたちをついつい観察してしまいます。
ラリーカーが通るたびにお父さんに持ち上げてもらう女の子。「もう一回もう一回」とねだる姿が、なんとも可愛すぎました。
かと思えば、ヘビメタ王国の北欧を象徴するようなファッショナブルすぎるお兄さんも。着用しているTシャツもヘビーなガッツリ系でした。
スタートから約1時間が経過し、RC1クラスのメーカーワークス勢がスタート。フィンランド人ドライバーにはもれなく歓声が湧き起こります。写真はのエサペッカ・ラッピ(ヒョンデi20 Nラリー1)はそのひとり。
フォード・プーマ・ラリー1を駆るタナクにはついつい気持ちが高まってしまう私。昔々、前回のMスポーツ時代に「なんかめっちゃくちゃ速いドライバーがいきなり出てきたーーっっ!」と。あの衝撃は忘れられません。
池ぽちゃで“タイタナック”と呼ばれたり、クルマが燃えて山火事になっちゃったりとか、いま思えば、彼の代表する(?)おもろ話はチャンピオン獲得前のMスポーツ時代だったなぁ……。
数多くのフィンランド人ドライバーが居るも、やはり一番『待ってました感』があったカッレ。最年少チャンピンはすっかりフィンランドのヒーロー的ポジションですわ。
そのカッレの出走を見送れば、お客さんはザザザーーーと我先にと帰路に……。もう少し後続車を見届けてあげたいのですけど、すでに21時と結構なお時間。翌日も遅くない時間の起床のため、申し訳なさを感じつつ私も早々にお暇することにしました。
後編へ続く。
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■CHOCO CIDER
愛知県出身。グラフィックデザイナー
使用カメラ:SONY α6000、iPhone
2001年、兄のひとりがスバル・インプレッサWRX STIを購入したことがWRCに沼るきっかけに。初WRC観戦は2004年のラリージャパン。本場のWRC観戦を目的に2008年渡英。2016年の本帰国後も欧州を時々奔走。