ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2024.03.21 18:58
更新日: 2024.03.21 19:07

【動画】Fワード吠えるブエミ、スチュワードの裁定風景から『バトンのメガネの理由』まで。WEC開幕戦の舞台裏公開


 3月2日にカタールで開催されたWEC世界耐久選手権の2024シーズン開幕戦。その舞台裏を追った見どころ満載のドキュメンタリー映像が、シリーズの公式YouTubeチャンネルで公開されている。

 この『WEC Full Access』シリーズは、TVの中継映像やハイライトでは放映しきれない舞台裏を、ガレージ裏の様子や車載映像・無線などをふんだんに交えながら振り返るもの。撮影クルーの“密着ぶり”はかなりのもので、感情をむき出しにするドライバーの様子や、“素”のやりとりなど、レースの裏側のリアルを伝えてくれる人気シリーズだ。

 初開催となるルサイル・インターナショナル・サーキットでの1812km(10時間)レースの裏側は、約44分の動画にまとめられている。ここではその見どころをいくつか紹介したい(動画は記事末尾)。

■「これ以上はカメラがあるから言えないけど」

 今季のWECの一番の見どころといえば、4マニュファクチャラーが新規参戦する最高峰ハイパーカークラスの戦いだ。とりわけ、今季から採用されている2ステージ制の予選では、19台のハイパーカーが10台へと絞られることで、新たな“ドラマ”が生まれることになった。

 今回、予選で大きくフィーチャーされているのは、二次予選『ハイパーポール』進出を逃したトヨタGAZOO Racing8号車陣営の様子だ。

 トヨタのピット裏では7号車GR010ハイブリッドを駆るニック・デ・フリースの好ラップに注目が集まったのも束の間、8号車は11番手に終わり、アタックを見守っていたドライバーとチーム代表を兼ねる小林可夢偉らが「なぜこうなったのか、分析しないといけないね」と“反省会”を開始する。

 タイヤのグレイニング(ささくれ摩耗)に起因すると思われる低パフォーマンスを受け、アドバイザーを務めるアレックス・ブルツが「ステアリングを……妻のように扱うのがベストだ。これ以上はそこにカメラがあるから言えないけど」と密着するカメラを意識しつつ場を和ませるが、8号車のセバスチャン・ブエミはニコリとも笑わず、アタックを終えたブレンドン・ハートレーのもとへ。

 ブエミはどうやら、ハートレーがアタックに入る前の周のセクター1で36秒9という速すぎるタイムを刻んだことで左フロントタイヤにグレイニングが生じたと考えているようで(1周後の最速周では37秒1)、「僕らはあの周に、君がすでにアタックを始めちゃったんじゃないかと思ったんだ。そこで100%、グレイニングが起きたんだ」とまだコクピットを降りてもいないハートレーへとFワード混じりにまくしたてる。

 続いて始まったハイパーポールでポールポジションを獲得したポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの5号車陣営では、今季よりポール獲得陣営に贈られる“金メダル”を手にしたフレデリック・マコウィッキらが“御大”ロジャー・ペンスキーと、予選最速を喜ぶ場面も。「ここではスタート位置が重要。前のクルマについていくのは難しいから」と、マコウィッキはロジャーにPP獲得の重要さを伝えている。

 決勝の様子に行く前には、WECの公式レポーターを務めるアンソニー・デビッドソンとピットレポーターのルイーズ・ベケットが、ハーツ・チーム・JOTAからフル参戦するジェンソン・バトンのもとを訪問するシーンが収められている。

 開幕戦の映像や写真などで、バトンがメガネを掛けてドライブするシーンが気になった方も多いと思うが、デビッドソンもこのことを指摘。バトンは「去年からかけているんだ。ジミー・ジョンソン(2023年に“改造版NASCAR”でともにル・マンに出場)がかけていて、『試してみなよ』って言われてね」とそのきっかけを明かすとともに、改めてWECにフル参戦することにした理由などを語っている。

 決勝では、接触やスピンのあったスタート直後の1コーナーの様子が複数の車載カメラでじっくりと観察できるほか、51号車フェラーリのリヤエンドが突然外れるシーンは、その直後にいたGT車両の車載カメラの映像で“恐怖体験”ができる。

 第1スティントを終えて降りてきた8号車トヨタのブエミのところには、可夢偉チーム代表が寄り添う。「(このレースに)勝つのはポルシェだ。そのことは忘れろ」とモチベーションを保たせようと声掛けするが、ブエミは頭を抱えてしまう。その後ブエミは密着カメラに向かって「もうOKだろ」と声をかけ、立ち去るよう促した。

 そして今回、“舞台裏”としてもっとも特筆すべき映像は、接触に関して審議を行う審査委員(スチュワード)室の様子が公開されたことだろう。

 レース中盤、31号車BMWと2号車キャデラックの接触では、スチュワードが車載映像や接触時の車速などのデータを取り揃えたうえで、ドライバー・アドバイザーのヤニック・ダルマスの意見も聞きながら、キャデラックへの「次のピットストップで停車時間10秒追加」という裁定を下すに至るまでのプロセスを垣間見ることができる。

 最終盤、優勝に向けてひた走る6号車ポルシェの『ゼッケン貼り付けのためのピットストップ』の様子も、カメラはしっかりと押さえている。余裕はある状況ながら、ペンスキーのメカニックたちは「ふたりがステッカーの貼り付け、ふたりがオイルの補充だぞ」と作業前の確認に余念がない。アンドレ・ロッテラーも心配そうに作業を見守るが、無事にピットアウトすると拍手がガレージ内に響いた。

 もちろん、ファイナルラップ目前でプジョーに起きた悲劇の「ノー・パワー!」の様子も収録。また、パルクフェルメでは、優勝したローレンス・ファントールを称えに来る弟・ドリスの姿も確認できる。

■The Season Everybody Dreamed About Is Here I WEC Full Access (EN) I Qatar Airways Qatar 1812 KM


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