ハイブリッド車両のLMP1-Hと非ハイブリッドのLMP1-Lの統合や、ウインターリーグ制への移行措置として採用される2018/19年という長きにわたる、変則”スーパーシーズン”の導入など、過渡期に入ったWEC世界耐久選手権。アウディが去り、ポルシェも退場を表明した今、その新生LMP1という新たな戦場に向け、挑戦者たちが続々と動きを見せはじめている。
現時点では細部のディテールが確定していないものの、FIA国際自動車連盟とACOフランス西部自動車クラブは来季以降のトップカテゴリー向けテクニカルレギュレーションの方向性を示しており、現行のLMP1規定を統合しハイブリッドもノン・ハイブリッドも性能調整の元に同等のパフォーマンスレベルに揃える措置を取ると明言。
これにより、現状変更なしのシャシー規定と合わせて、ハイブリッドはもちろん、ターボや自然吸気、ディーゼル、そしてフルEVなど多くのパワーユニット選択肢が考慮可能となる。
FIAとACOの最大の狙いは、膨らみすぎたLMP1開発・参戦コストの抑制だが、このルールがもし費用対効果の改善につながるのであれば、参戦を検討すると発言するコンストラクターが数多く存在している。
マクラーレンを率いるエグゼクティブディレクターのザック・ブラウンは、「WECはリセットボタンを押す機会があると信じている」と発言し、かつてのポルシェ956や962の時代のように、マニュファクチャラー系のワークスチームと、プライベーターチームがともに勝利の可能性を賭けて戦うことができる時代の復権を希望する、と語った。
「この数年、ハイブリッドLMP1によりトップカテゴリーのコストは信じがたいほど上昇した。しかもメーカーはそのコスト上昇に見合った対価を得ていないように感じられる」とブラウン。
「ローコストで高いレベルのコンペティションを実現し、誰にも勝利の可能性を開いたLMP2の精神を思い出せばいい。それをLMP1にも適用するんだ。ちょうどIMSAのDPiみたいにね」
「可能なら我々マクラーレンとしてもル・マン24時間に”復帰”することを望んでいる。500万ドル(約5億6000万円)のLMP2に対し、20倍のコストを必要とする現行LMP1にその価値はなく、もし彼らがDPiのような精神に立ち戻り(新生LMP1が)2000万ドル(約22億6000万円)で戦えるというなら、我々は非常に興味があるよ」
同じくイギリスを拠点に活動し、2007年から2014年までアキュラとHPDのために製作したプロトタイプ・スポーツカーで成功を収めたR&D企業、ワース・リサーチもプライベートLMP1マシンのデザインで国際的スポーツカーレーシングの表舞台への復帰に取り組んでいる。