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ル・マン/WEC ニュース

投稿日: 2018.06.21 11:32
更新日: 2018.06.21 11:33

ル・マン24時間:「勝って当たり前」ではなかった。牙を残したトヨタの本気

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ル・マン/WEC | ル・マン24時間:「勝って当たり前」ではなかった。牙を残したトヨタの本気

 第86回ル・マン24時間耐久レースで総合優勝を飾り、通算20回目のル・マン挑戦で悲願を成し遂げたトヨタ。チームの24時間に渡る戦いは順風満帆に見えたが、その裏には、さまざまな試練があった。

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「正直、何かが起こる気しかしませんね」

 月曜日の車検に姿を現した中嶋一貴はレースに対する展望を聞かれ、達観したような表情で、そう述べた。そのすぐ近くでは、F1カナダGPを終えてすぐ車検に駆けつけたフェルナンド・アロンソが、うれしそうに次から次へとファンとの記念撮影に応じている。

 同じ8号車のステアリングを握るふたりだが、初出場の“ルーキー”と、数々の辛酸をなめ続けてきた男では、レースに対する想いは、やはり大きく異なる。

 ポルシェの撤退により、トヨタは唯一のマニュファクチャラーとなった。LMP1のライバルは、みなプライベーターで、マシンはノンハイブリッド。トヨタTS050ハイブリッドとの性能差を埋めるべく、EoT(技術の均衡化)により車両重量や、燃料流量などノンハイブリッドマシンの相対的な性能は引き上げられた。

 しかし、WEC開幕戦スパでの圧勝劇や、テストデイでのタイム差を見る限りTS050には大きなアドバンテージがあり、トヨタの優位性は変わらない。退屈なレース展開を予想する者も少なくはなかった。

 しかし、2年前に残り3分の悲劇を経験した一貴にとって「絶対」はない。いかにライバルとの力の差があろうとも、チェッカーを受けなければ、すべてが無になるという現実を誰よりも良く知る。だからこそ、万全とも言える状態でレースウイークに臨みながらも一貴は正直に不安の言葉を口にしたのだろう。

■7号車のセットをコピー

 水曜日から始まったフリー走行では、総じて小林可夢偉らがステアリングを握る7号車のほうが良い仕上がりだった。一貴は8号車のセットアップになかなか満足できず、それはチームメイトであるアロンソや、セバスチャン・ブエミも同様だった。

 策を尽くした上で一貴らが選んだのは、7号車のセッティングを取り入れること。その結果8号車はスピードアップに成功し、クリアラップに恵まれた一貴は予選Q3で3分15秒377という最速ラップを記録した。

 昨年、可夢偉が刻んだ3分14秒791のレコードタイムには及ばなかったが、それでも14年以来二度目となるポールポジション獲得となった。

「もちろんうれしいですが、予選は100%のうち1%にも満たないもの。見てもらえば分かると思いますが、アタマはもうレースに向けて切り替わっています」

 一貴の顔に、心からの笑顔は見られなかった。

■チーム内のライバル心


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