富士スピードウェイでの第2回公式テストを終え、いよいよ開幕戦鈴鹿へと向かう2019年の全日本スーパーフォーミュラ選手権。今季は3度目のタイトル獲得を目指すドライバーが3人おり、富士テストではそのうちのひとり、山本尚貴が総合トップタイムをマークしたが、トヨタ勢のふたり、石浦宏明と中嶋一貴も上昇気流に乗りつつある雰囲気を感じさせている。新車『ダラーラSF19』乗りこなしの現況などについて、石浦と一貴に聞いた。
2015&17年王者の石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)は前回の鈴鹿テスト終了時、新車の感触について「全然順調じゃない」と語りつつ苦笑していたが、富士テストでは初日午後にセッション3番手タイムをマーク、2日目にはセッション中のタイミングモニター上で幾度となく上位に顔を出すなど、石浦らしい存在感を発揮し、上昇ムードを感じさせた。
「そうですね、良くなってきました。今日(2日目)はちょっとトラブルが出て消化不良な面もありましたけど、セッションによってはいいタイムで走れていたと思います」
2日目は最終的なベストタイム順位こそ午前6番手、午後7番手にとどまったが、トラブルもあったとの状況を考慮すれば、石浦の上昇は間違いないと見ていいところ。ただ、これがコース適性による変化なのか、あるいは1回目、2回目とテストを進めてきたことによる新車への進化が主なのかは気になる。
すると石浦からは、「クルマに対しての部分ですね」との答えが。いよいよ彼と彼の陣営がSF19というマシンを“つかんで”きたといっていいようだ。やることはしっかりやって開幕戦に臨める、ということだろう。
「はい。トラブルがテストで出てくれているのもいいことだと考えられますしね。もちろん、今日の(富士での)クルマの感じからそれを(開幕戦の)鈴鹿にどう活かしていくかは、また別の難しい話ですけど、良くなってきていると思います」
石浦の上昇内容詳細については後述するとして、もうひとりのトヨタ勢“2タイムスチャンピオン”、2012&14年王者・中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)も富士で石浦同様に上げ潮ムードを感じさせている。
2日目は午前3番手、午後5番手のセッション順位につけるなど、一貴と東條力エンジニアのスーパーフォーミュラでの初タッグ、こちらも存在感を発揮してきたといえよう。
「いろいろと試していて、試せば新しい発見もたくさんあるので、あとはそれをうまくまとめていければ、というところだと思います。タイムは、それぞれのタイヤの状況とかが違うので、読みづらいですよね」
「(自分の位置的には)鈴鹿と同じくらいじゃないですか? やはり、結局は本番で『そのときのコンディションに合わせ込んだ人が勝つ』ということでしょう。(自分を含めて多くの選手が)その範囲内だと思います。自分たちなりにしっかり歩めてはいます」
さて、一貴はSF19というマシンへの変化の規模をどうとらえているのだろうか。先々代のスウィフトSF13(旧名FN09)から先代のダラーラSF14への変化に比べると、今回のSF14からSF19、ダラーラ同士での車両更新は、やはりというべきか、「前回と比べれば全然(変化の規模は)小さいと思いますよ」という。
前回の変化を100としたら、今回の変化はどれくらいだろうか、と訊くと、一貴は「誰か20くらいって言ってましたよね?」。これは鈴鹿テスト時点での石浦の談話である。そして一貴は、「そうですね、20か、もっと小さい、かな? フロントタイヤが太くなっていることを考えると、クルマ自体での変化は10くらいかもしれません」と分析した。鈴鹿での石浦の「20」はタイヤ込みの印象だと感じられたので、そうだとすれば、2タイムスチャンピオン両名の分析は概ね一致するところとなる。