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投稿日: 2019.06.24 07:02
更新日: 2019.06.24 07:07

ギャンブル含みだった1周目ピット戦略と、讃えたい可夢偉と野尻の果敢なオーバーテイク《スーパーフォーミュラ第3戦決勝あと読み》

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スーパーフォーミュラ | ギャンブル含みだった1周目ピット戦略と、讃えたい可夢偉と野尻の果敢なオーバーテイク《スーパーフォーミュラ第3戦決勝あと読み》

「1周目でピットインして給油をしない戦略だったので、その後はキツかったです。コースティング(燃費走行)しながらの走行だったので、山本選手とのギャップは聞いていましたが、タイヤも燃費もキツイ状況でした」と野尻。

 2番手アウアーとのバトルについては「相手がミディアムタイヤ(野尻はソフトタイヤ)で、前の周に彼がOTS(オーバーテイクシステム)を使って、その周は使えない状況だったので、これまでの自分はああいう場面で勝負をしなかったんですけど、どのように言えばいいのか難しいですけど……魔が差したと言われればそうかもしれない。ブレーキングポイントはそれほどロストしていなかったんですけど、問題はそれまでずっとコースティングしていたので、ブレーキングの限界がわからないまま(オーバーテイクに)行ったので、そこの読みが浅かったかなというのが反省点です」

「3位で帰ってきていたらみんなハッピーだったのかもしれない。でも、やはり僕は山本選手に勝ちたいと思っていたので、あの場面は無理をしてでも抜いて行きたかった。でも、チームにとっても、僕のドライバー人生にとっても良くない選択だったのかな……」と、肩を落として後悔する野尻。

 今年、山本尚貴とチームをスワップする形になり、チャンピオンチームに入った野尻。今回、これまで自分が在籍していたダンディライアンでトップを走る山本になんとか追いつき、追い越したい気持ちは理解できるし、その負けたくない気持ちは間違いなく山本も同様だったはず。今季、山本と野尻がお互い抱えているプレッシャーは当人たちにしか分からない大きなものがあることは想像に難くない。

 その大きなプレッシャーのなかで、3位に留まることよりも勝利を目指してオーバーテイクを試みた野尻を、誰が非難できるだろう。クルマ、コース特性などでオーバーテイクが難しい状況のなかで、野尻、そして可夢偉は果敢にオーバーテイクを仕掛けた。たとえそれが運で成功しても、そして失敗しても、オーバーテイクを仕掛けること自体が今のスーパーフォーミュラでは称賛に値する。野尻には次回、同じようなシーンになったら再び同じようにオーバーテイクを仕掛けてほしい。今回のようなチャレンジを、スーパーフォーミュラのファンはドライバーに求めているはずだ。

 また今回のSUGOは日本人ふたりのルーキーにとっても厳しい内容となった。「タイヤが思ったよりも冷えて温まりきっていなくて、前が加速してアクセルを踏んだ時にコーナーリング中にアクセルを踏みすぎてしまった。あのスピンはダサかった」とセーフティカー中のSPひとつ目でスピンを悔やむルーキーの坪井翔(P.MU / CERUMO · INGING)。

 そして、左リヤの原因不明のサスペンショントラブルでピットレーンの右コーナーを曲がり切れずホワイトラインをカットして、再ピットインした牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)。今年のスーパーフォーミュラはこの2戦、悪天候などでまともなドライコンディションでの走行が少なく、走行経験の少ないルーキーには厳しい状況が続いている。ベテラン陣がランキングの上位に名前を並べるなか、次代の日本を担うルーキーたちの次戦の奮起に注目したい。

2019年スーパーフォーミュラ第3戦SUGO
表彰台も確実に見えていた状況だけに、トラブルが悔しい牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING)

 また、今回のSUGOでは予選上位8台中7台がホンダエンジン勢で、予選後にはトヨタエンジン勢から、「最終コーナーの立ち上がりから直線で5km/hは違う」との声が多数聞こえた。今季のスーパーフォーミュラのエンジンは年間1基での戦いになり、物理的なアップデートはできない状況だが、ターボによるブースト圧の調整、ドライバビリティなど制御系などのエンジン特性の違いが今回のSUGOでは出ていたようだ。

 このSUGOは特にホンダエンジンの特性がマッチしていたようで、セクター4の最終コーナーは予選ではほとんどアクセル全開のままの区間となり、その後のストレートもアクセルを踏みっぱなしのため、セクター4でのドライバー側でのタイムアップは難しい。

 ただ、決勝では劣勢と見られたトヨタエンジン勢はホンダエンジン勢よりも燃費の面で勝っていたようで、正確な比較は難しいが、結果として1周目にピットインして無給油を選択するチームはトヨタエンジン勢が多かった。この傾向も、次戦の富士ではどのようになるのか見てみたい。

2019年スーパーフォーミュラ第3戦SUGO
1回目のセーフティカーランの坪井翔(P.MU / CERUMO · INGING)


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