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投稿日: 2022.08.24 17:03

接近戦実現向けた次世代車両の進化を「ものすごい」と評価するJRP。一方チーム側は「いまじゃない」とコストに戸惑いも

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スーパーフォーミュラ | 接近戦実現向けた次世代車両の進化を「ものすごい」と評価するJRP。一方チーム側は「いまじゃない」とコストに戸惑いも

 あるチームの首脳は、「お金がかかること自体、いまはやる時期じゃない」と話す。

「コロナがなくて、徐々にお客さんが増えていれば違ったかもしれないけど、いまはコロナでバンって(動員・収入が)下がって、それを戻そうとなんとか歯を食いしばってやっているところ。それが戻ってからそっち(改革)を目指そうとするなら分かるけど……。いまはスポンサーフィーも下がってきて、チームもやりくりがすごく大変な時期。何年とは決めなくても、たとえば1〜2年、世の中の状況をもっと見て、(導入を)決めたっていいのではないか」

「そもそも、エンジンのメンテナンス代とか、エントリーフィーがなくなる(減免される)、というのなら分かる。でもこちらに入ってくるもの(収入)がなくて、出るもの(支出)だけがハッキリしているというのは、どんな商売でもダメじゃない?」

 この費用面に関しては、別のチームオーナーも「やっぱりお金がかかるので、来年導入したいか? と言われたら“ない”ですね」と語る。

「1台でも1500万、2台体制なら3000万かかるわけです。カーボンニュートラルはやっていかなければいけない取り組みだし、そうやって時代に沿っていかないとスポンサーもついていかない、というのは分かります」

「でも、スーパーGTなら多少なりともバック(インセンティブ)があるけど、そういうのがいまのJRPにはなくて、我々はお金を使う一方。(新燃料では)燃料代も上がるだろうし、タイヤ代もおそらく上がる。ちょっとお金がかかりすぎていて、正直厳しい」

 また、費用面とは別に“オーバーテイクのあるレースを目指す”アプローチに関しても、エントラントからは異論が聞かれた。

「絶対、変わらないから。それはどのカテゴリーでもやってきていることだし、ダウンフォースを減らそうが増やそうが、タイヤの径や幅を変えようが、いままでさんざんやってきて、何も変わっていないでしょ。それをまた当たり前のように題材にしているのが、話がおかしいと思う」(前出のチーム首脳)

 この点については、JRPが現状胸を張る「これまでに見たことがないくらい」進化しているという言葉を信じるか否か、という部分でもある。

 また“エンターテインメント性の向上”という目標に対しては、「もっとお金をかけずにできることがある」と語る別のチーム関係者もいた。

 ドライバー経験のあるこの関係者は「いまはクルマにお金がかかりすぎている」と指摘する。

「サードダンパーとかもすごく高いし、ウイング1回壊して300万、大きなクラッシュだと1000万となると、チームとしてももたないし、それを聞いたらドライバーもなかなか攻められなくなってしまう。だったらダンパーもワンメイクにするなど車両のコストを下げ、そのぶん別のところにお金をかけた方がいい」

「あと、『抜きつ抜かれつ』はいいのですが、やっぱりレース距離を伸ばしてもらわないと、いまは給油もないので、作戦の幅がない。いまは10周目に入るか、引っ張るかのどちらかしかなくて、予選で埋もれたら上がってこれない。これだと見てる人もつまらないんじゃないかと思うんです」

「(レース距離は)300kmとは言わないけど、せめて250kmとかにして、1ストップか2ストップか、みたいな方が楽しくないですか? エンジンのパワーを抑えれば、その部分はコストを上げずにできると思う。だから、もうちょっとお金の使い方を考えた方がいい、と思います」

 次世代車両導入に向けては、もてぎ戦の週末にも話し合いが持たれたようだが、カーボンニュートラル化とエンターテインメント性の向上に主眼を置いているように見えるJRPと、費用の問題に頭を悩ますエントラントの議論は「平行線だった」と前出のチーム首脳は明かす。

 新型車両の導入は心躍るニュースだが、高騰するコストに耐えきれずに参戦台数が減るようなことがあれば、シリーズとしての魅力を毀損しかねない。今後、次世代車両の正式導入決定に向けては、コース上でのテストだけでなく、“コース外”での調整もカギを握ることとなりそうだ。

モビリティリゾートもてぎで開催された2022年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第8戦の様子
モビリティリゾートもてぎで開催された2022年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第8戦の様子


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