■「いま弱いところが分かって良かった」
頭では分かっていても、目の前にライバルが現れ、バトルを展開するシーンになってしまったら、どうしても戦ってしまうのが土屋監督いわくの“レーサー”の性。特に、これまでフォーミュラで育ってきた坪井にはなおさらだろう。
ふたりひと組で戦い、300km以上のレース距離をマネージメントしながら、かつバトルも展開しなければならないのがスーパーGTの難しさ。特にマザーシャシーはストレートスピードが厳しい状態のときが多く、バトルになればそのダウンフォースを活かしコーナーで勝負しなければならない。ただ、それではタイヤを“使って”しまうのだ。
「本来、開幕戦で表彰台に乗れていればいい流れにはあるので、3位は喜ばしい順位だと思うんです。スーパーGTではなおさらですよね。でも、終わった瞬間はただただ悔しかったです。はっきりと自分のいいところと悪いところが見えてしまったので、なおさらですね」と坪井は開幕戦を振り返る。
「逆に、いまそれが分かって良かったかもしれませんね。F3に活かせるところもあると思うし、上のカテゴリーに上がる前に、いま経験できて良かったという……という気持ちに切り替えられました」
まだ正式な発表はないが、坪井は次戦富士でGT500クラスのDENSO KOBELCO SARD LC500をドライブするはずだ。そして、坪井にとって今年はタイトルを必ず手中に収めなければならない全日本F3選手権の開幕が迫っている。
「GTの開幕では悔し泣きでしたが、今年はF3で嬉し泣きする予定ですから」
薄暗くなったパドックで顔を上げ、照れくさそうに笑顔をみせてくれた表情は、またひとつ成長を感じさせてくれたような気がした。