終わってみれば大逆転。緊迫度が高いスーパーGT第8戦もてぎの決勝レースを終え、GT300クラスはレースを制したLEON CVSTOS AMGの黒澤治樹/蒲生尚弥組が、見事12ポイント差をひっくり返しての初戴冠となった。ドラマチックな逆転劇は、いかにして成し遂げられたのか。監督、エンジニアたちのコメントからレースを振り返ってみよう。
■“流れ”が来なかったARTA BMW。必死の無交換も実らず
改めてこの第8戦もてぎの前のポイントランキングを振り返ってみると、高木真一/ショーン・ウォーキンショー組ARTA BMW M6 GT3が60ポイント。黒澤治樹/蒲生尚弥組LEON CVSTOS AMGが48ポイント、嵯峨宏紀/平手晃平組TOYOTA PRIUS apr GTが46ポイント。谷口信輝/片岡龍也組グッドスマイル 初音ミク AMGが45ポイント、新田守男/中山雄一組K-tunes RC F GT3が44、平中克幸/安田裕信組GAINER TANAX GT-Rが42ポイントで、ここまでがチャンピオンの権利を残していた。
LEON CVSTOS AMGは、逆転戴冠には土曜の時点で2位フィニッシュ以上をすることが必須だった。もちろんランキングでそれ以下のチームはすべて優勝が必須。この段階で、チャンピオンを狙うチームは、「いかにして勝つか(LEONの場合は2位以上に入るか)」が目標で、その上でARTA BMW M6 GT3の得点が低いことを祈るのみ……というレースだったのだ。
まず、ランキング首位だったARTA BMW M6 GT3のレースを振り返ろう。予選10番手というポジションから、序盤こそ6周目にポジションを上げ、さらに13周目に8番手に浮上するなど、タイトルへ向けひとつでもポジションを上げようというレースを展開していた。
ARTA BMW M6 GT3の安藤博之エンジニアは、「昨年はかなり早めにピットインしたチームも多かったので、他には早めにピットへ入ってもらい、その間、高木真一選手にクリアラップをとってもらい、前とのギャップを詰めよう」という作戦だったと語った。
ただ、レースは安藤エンジニアの予想に反し、ピットインを遅らせるチームが多かった。その分、ARTA BMW M6 GT3は思うようにクリアをとれず、タイムロスを喫してしまう。「コース特性上抜けず、そこで思うようにポジションを上げられないまま、ピットインしなければなりませんでした」と安藤エンジニア。
チャンピオンを争うライバルたちが無交換作戦を成功させてくるなか、ARTA BMW M6 GT3のタイトルは少しずつ厳しさを増していく。「レースである程度マージンをとれれば二輪交換等の作戦も考えていたのですが、無交換で出すしかチャンピオンの可能性はなかった」と安藤エンジニアが語るとおり、ARTA BMW M6 GT3は無交換作戦を“採らざるを得ない”状況になってしまった。
後半スティントを担当したショーン・ウォーキンショーは、ピットアウト後SUBARU BRZ R&D SPORTと接触してしまい、右のサイドミラーを脱落させてしまう。これについては「(リヤビュー)モニターもあるので大きな問題にはならなかったと思っています(安藤エンジニア)」というが、少しずつタイヤも厳しくなり、リヤのみ交換を行ったD’station Porscheにかわされてしまうと、さらに同じ無交換だったHOPPY 86 MCにもかわされ、最後は9位でフィニッシュした。
ほぼ確実だろうと思われていたタイトルには届かぬ結果となってしまった。安藤エンジニアは「ポイント差があっただけに、悔しいですね……」と厳しい表情を浮かべている。このレースでは、ARTA BMW M6 GT3には“流れ”が向いていなかったと言えるが、スーパーGTの厳しさを痛感させる結果となってしまった。