レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

スーパーGT ニュース

投稿日: 2021.04.24 07:00
更新日: 2021.04.23 23:45

絡みあう2台の橙色。スーパーGT第1戦決勝で繰り広げられた壮絶“GRスープラ対決”の舞台裏

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


スーパーGT | 絡みあう2台の橙色。スーパーGT第1戦決勝で繰り広げられた壮絶“GRスープラ対決”の舞台裏

 絡みあう2台の橙色。ENEOS X PRIME GR Supraの山下健太を、au TOM’S GR Supraの坪井翔が激しく追う。彼ら25歳の若武者たちの息詰まる首位争いは、延々に続くかのように思われた。75周目のブレーキング競争に敗れた坪井がサンドエリアに突っ込み砂煙を上げるまでは……。

 2021スーパーGT第1戦岡山の流れが変わったのは、それに先立ち33周目にセーフティカーが入ったときだった。そのとき2番手を走行していたENEOS X PRIME GR Supraの大嶋和也は、迷うことなくピットに飛び込み山下にバトンタッチ。『モリゾウ』こと豊田章男トヨタ自動車社長がチームオーナーを務めるROOKIE Racingのメカニックは、抜群に速いピット作業で山下をコースに送り出した。

 一方、ポールシッターの阪口晴南がしっかりと首位を守り切るも、ピット作業に時間を要したKeePer TOM’S GR Supraは大きく後退。その結果、ENEOS X PRIME GR Supraが事実上のトップに立った。

「KeePerもauも後ろに見えず、これは楽勝だな」と、そのとき山下は思ったという。第1スティントを担った大嶋のペースはすこぶる良かった。抜き去ることこそできなかったが、ポールポジションスタートのKeePer TOM’S GR Supraの阪口に、背後から圧を加え続け首位浮上の機をうかがった。

 大嶋によれば、土曜日朝の走り始めからクルマは速く、予選は2番手。

「ヘアピンでアンダーが出て、そのまま待てば良かったのにアクセルを踏んで無理やり曲げようとしてスライドし、次のコーナーへの姿勢が乱れてしまった。あれでコンマ3秒は失ったと思うので、チームに申し訳ない気持ちでした」と大嶋。

 ポールポジションを獲得した阪口との差はコンマ1秒だったが、チーム内に大嶋を責める者はいなかった。なぜなら、彼は極度の体調不良に悩まされていたからだ。

「レースウイークの水曜日、スーパーGTではないクルマのテストをしているときに大きなクラッシュをして、体を痛めてしまったんです。その瞬間は『これはもう絶対に週末乗れない、どうしよう』と焦りましたね。病院で見てもらい、脳にも血管にも異常はなくドクターストップは出なかったのですが、最初は首が上下左右に1mmくらいしか動かず、金曜日朝の時点では、とてもじゃないけど走れそうにない状況でした」と大嶋。

 後日、山下は「大嶋先輩、明らかに動きがロボットでした。僕もレースでおなじような経験をしていたので、どれくらい辛いか想像できたし、本当に心配でした。まさか乗るとは……」と金曜日を振り返った。

 豊田氏は「無理をして出なくてもいいぞ」と大嶋に伝えたというが、「我慢してでも乗れるレベルならば出たいです」と、自分の意志で出場を決断。「ならば、やりたいようにやってくれ」と、豊田氏は大嶋の気持ちを尊重したという。

 とはいえ痛みで睡眠を充分にとることができず、食べ物もほとんど口にできなかったようだ。3月上旬の岡山テストの結果がそれほど芳しくなかったこともあり、元々チームは第2戦富士に照準を合わせていた。そこにきて大嶋の体調不良もあり、岡山に関しては厳しい戦いが予想された。

 ところが、Q1を担った山下はKeePer TOM’S GR Supraの平川亮に次ぐ2番手タイムを獲得。その映像を、マッサージを受けながら見ていた大嶋は「おい、あんまりプレッシャーかけんなよな(笑)」と思ったという。それくらい、彼らのクルマはセッティングが決まっていたのだ。

 良い流れは決勝の第1スティントでも保たれ、前述のように大嶋は首位浮上の下地を作り、山下にバトンをつないだ。そこまでは、すべてが完璧に機能していた。しかし、一度は遠く離れたau TOM’S GR Supraの坪井がみるみるうちに距離を縮め、スーパーGTの歴史に残るであろう、長く激しい戦が始まった。

 山下のクルマはペースが上がらず、それを容赦なく坪井が攻め立てる。「アンダーステアが強くなり、アクセルを踏んで曲げていこうとしたら今度はリヤが壊滅的にグリップしなくなり、もうズルズルでした」と山下。予選から第1スティントまで保たれた速さは、完全に失われていた。

2021スーパーGT第1戦岡山 ENEOS X PRIME GR Supraとau TOM’S GR Supraのバトルは1~2コーナーでも繰り広げられた
2021スーパーGT第1戦岡山 ENEOS X PRIME GR Supraとau TOM’S GR Supraのバトルは1~2コーナーでも繰り広げられた
2021スーパーGT第1戦岡山 ブレーキをわずかにロックさせながらトップ争いをするENEOS X PRIME GR Supraとau TOM’S GR Supra
2021スーパーGT第1戦岡山 ブレーキをわずかにロックさせながらトップ争いをするENEOS X PRIME GR Supraとau TOM’S GR Supra

■次のページへ:両車で分かれたレーキとタイヤ選択


関連のニュース

本日のレースクイーン

レーシングミクサポーターズ2024
荒井つかさ(あらいつかさ)

スーパーGT Photo Ranking

フォトランキング