2022年シーズンのスーパーGTも11月5〜6日に開催される第8戦『MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL』でシリーズ最終戦を迎える。ここでは、2019年以来3年ぶりにシリーズタイトル決定戦の舞台となるモビリティリゾートもてぎで開催された過去のスーパーGT戦から記憶、そして記録に残る名レースをピックアップしてお届けする。
■2007年第7戦:XANAVI本山哲とARTA伊藤大輔。タイトルへの執念が故の接触
全9戦が開催された2007年シーズン。第6戦終了時点で8号車ARTA NSX(伊藤大輔/ラルフ・ファーマン)が69ポイントでトップ。21ポイント差のランキング2番手に23号車XANAVI NISMO Z(本山哲/リチャード・ライアン)という状況で第7戦もてぎの300kmの戦いを迎えた。
是が非でもARTAの前でチェッカーを受け、そのポイント差を縮めておきたいXANAVIだったが、予選は11番手に。一方、ウエイトハンデ(現:サクセスウエイト)100kgを積むARTAは6番手からスタートを迎えた。決勝では100kgのウエイトの影響もあり、ARTAがペースに悩まされる一方、25周目にXANAVI本山がアウトラップのARTA伊藤をかわし5番手に浮上する。
しかし、タイヤへの熱入れが済んだARTAがジリジリとその差を縮め、42周目には伊藤が幾度となくオーバーテイクのチャンスを伺うが、本山はポジションをキープ。そんななかで迎えた38周目、第5コーナー進入で伊藤がアウトにマシンを振ると2台は並走しながら立ち上がる。続く130Rもサイド・バイ・サイドのまま通過するが、S字カーブ進入で2台は接触。ともにコース復帰を果たすもポイント圏外まで順位を下げることに。
なお、2007年のGT500クラスはARTA NSXが25ポイントの大量リードを守ってシリーズタイトルを獲得。一方、XANAVIは第7戦もてぎ以降3戦続けてポイント獲得に至らず、ランキング8位でZ33型フェアレディZ最終年を終えている。第7戦もてぎは2007年シーズンの行方、そして両者の命運を大きく左右した一戦と言えるだろう。
■2014年第8戦:51秒の大差。まさに完璧なレースで逆転王者に
DTMドイツツーリングカー選手権との車両規定統一への取り組みによる新規定元年となった2014年。この年も最終戦の舞台はもてぎとなった。36号車PETRONAS TOM’S RC Fのジェームス・ロシターが67ポイントでドライバーズランキングをリードするなか、6ポイント差のランキング3位につけていた23号車MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)がポールポジションを獲得。
予選トップ3をミシュラン勢が占めるなか、PETRONASは4番手から。ロシターから3ポイント差のランキング2位につけるKeePer TOM’S RC F(伊藤大輔/アンドレア・カルダレッリ)は後方13番手からスタートを迎えることとなった。しかし、ポイントリーダーのPETRONASはオープニングラップでカルソニックIMPUL GT-Rと接触。フロントにダメージを負いズルズルとポジションを下げてしまう。
一方、タイトルから遠のいたかと思われたKeePerは、オープニングラップでカルダレッリが9番手に浮上すると、序盤からハイペースで周回を重ね次々とコース上でオーバーテイク。第2スティントではタイヤ無交換作戦をとる19号車WedsSport ADVAN RC Fをかわし、38周目に2番手に浮上する。
ただ、ポールポジションから完璧なレース運びを見せるMOTULは39周時点で40秒近いリードを築き、さらにその差を51秒まで広げてトップチェッカー。最終戦を制すると同時に、逆転で2014年シーズンのGT500クラスタイトルを獲得。クインタレッリにとっては3度目、そして松田にとっては参戦15年目にして悲願のGT初タイトル獲得となった。なお、2014年はニスモ創立30周年であり、このタイトルはニスモにとって10回目と、節目の多い一戦でもあった。
動画:2014 AUTOBACS SUPER GT Round8 MOTEGI Full Race 日本語実況
■2018年第8戦:最終ラップまで続いたRAYBRIGとKeePerの直接タイトル争い
100号車RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/ジェンソン・バトン)と1号車KeePer TOM’S LC500(平川亮/ニック・キャシディ)が同ポイントで並ぶなか、RAYBRIGは2番手から、KeePerは6番手からスタートを迎えた。しかし、第2スティントを担当したKeePer平川が猛追。平川は4番手に浮上すると、残り5周を迎えたところで3番手RAYBRIGバトンの1秒以内に接近。
GT300の隊列を捌くという点では元F1王者を凌ぐ技を見せた平川はジリジリとその差を縮め、テール・トゥ・ノーズの戦いに。見る者すべてが手に汗握る終盤のデッドヒートが展開されたが、オーバーテイクには至らず。3位でチェッカーを受けたRAYBRIG NSX-GTが、ホンダにとって8年ぶりのタイトルを獲得することとなった。
動画:2018 AUTOBACS SUPER GT Rd.8 MOTEGI GT 250km RACE GRAND FINAL 日本語コメンタリー
■2019年第8戦:執念のサイド・バイ・サイドで掴んだ17年ぶりの戴冠
2019年シーズンの最終戦として開催された第8戦。GT500のタイトル争いはWAKO’S 4CR LC500と、7ポイント差で続くKeePer TOM’S LC500の一騎打ちという状況で決勝を迎えた。32周目にKeePerがトップに浮上。2番手に同じくトムスのau TOM’S LC500、3番手にWAKO’Sというオーダーとなり、このままの順位であればKeePerが7点差を跳ね除けて逆転タイトルという状況となった。
逆境に追い込まれたWAKO’S山下健太は38周目の90度コーナーでau関口雄飛に仕掛ける。一旦は山下が先行するも、関口が立ち上がりで並走。2台はそのまま最終ビクトリーコーナーへ突入し、横並びのままわずかに接触。2台揃って最終コーナーをショートカットするようにコースオフ。
レースはKeePerが12秒の大量リードを守ってトップチェッカーも、執念のサイド・バイ・サイドを制し、2位を掴んだWAKO’Sが2ポイント差を守ってシリーズタイトルを獲得。脇阪寿一監督率いるチームルマンは、2002年のエッソウルトラフロースープラ(脇阪寿一/飯田章)以来となる17年ぶりのタイトルを手にした。
動画:2019 AUTOBACS SUPER GT Round8 MOTEGI Full Race 日本語実況
■2021年第4戦:王者STANLEYとWedsSportの一騎打ち
まだ記憶にも新しい2021年の第4戦は、もてぎでは初の7月開催に。レースウイークも好天に恵まれ、猛暑のなかでの一戦となった。ポールシッターのSTANLEY NSX-GTの牧野任祐がホールショットを守るも、タイヤへの熱入れが整った3周目より2番手の19号車WedsSport ADVAN GR Supraの国本雄資がペースアップ。7周目の130Rで牧野を攻略した国本がトップに浮上した。
トップ2台が僅差のままピットタイミングを迎えたが、WedsSport ADVAN GR Supraはピット作業で5秒ほどタイムロス。STANLEY NSX-GTの山本尚貴がアンダーカットに成功し、約5秒先行。しかし、そこからWedsSport ADVAN GR Supraの宮田莉朋が1周1秒近いペースでSTANLEY NSX-GT山本尚貴を追い詰め、35周目にはふたたびテール・トゥ・ノーズの戦いに。
2台の直接対決は長きに渡り続いたが、終盤に導入された2度のフル・コース・イエロー(FCY)の影響もあり、順位は変わらず。栃木県出身の山本が地元戦初勝利となるトップチェッカーを受け、TEAM KUNIMITSUにとってスーパーGT通算10勝目を飾り、2020年王者の貫禄を見せつけた。
動画:【Rd.4 決勝/前半】2021 AUTOBACS SUPER GT Round4 MOTEGI GT 300km RACE
動画:【Rd.4 決勝/後半】2021 AUTOBACS SUPER GT Round4 MOTEGI GT 300km RACE
11月5〜6日に開催される第8戦『MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL』。3年ぶりのもてぎ最終決戦ではどのような戦いが繰り広げられるだろうか。両クラスのタイトル決定の瞬間。そして、開場25周年を迎えたモビリティリゾートもてぎの歴史に新たな1ページが刻まれる瞬間を、その目に焼き付けてほしい。