スズキで開発ライダーを務め、日本最大の二輪レースイベント、鈴鹿8時間耐久ロードレースにも参戦する青木宣篤が、世界最高峰のロードレースであるMotoGPをわかりやすくお届け。第4回は、大混戦となっている2017年シーズン前半戦を振り返る。何故ここまで混戦となっているのか? その鍵となっているタイヤに迫る。
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「マーベリック・ビニャーレスがブッちぎるんじゃないか?」、「今年のチャンピオンはビニャーレスで決まりだろうね」。今シーズンの開幕前テストでは、そんな風にささやかれていた。しかも、かなりの大声で(笑)。実際、ヤマハYZR-M1を走らせるビニャーレスには死角がまったく見当たらず、ワタシ自身も「今年はビニャーレス!」と確信していたのだ。しかし……。
シーズンが開幕すると、確かにビニャーレスは速かった。いきなり開幕2連勝を飾り、誰もが「やっぱりね」と思った。「これは手が付けられないぞ」と。
だが、第9戦ドイツGPを終えてみれば、ポイントリーダーはいつの間にか129点を獲得しているレプソル・ホンダのマルク・マルケス。
ビニャーレスは5点差で2番手につけているものの、その直後には1点差でドゥカティのアンドレア・ドビジオーゾ、さらにその4点差でチームメイトのバレンティーノ・ロッシが控えているという混戦模様。前半戦を終えて、トップのマルケスから4番手ロッシまでの間はわずか10点差と、強豪がひしめき合っているのだ。
そりゃあ、開幕前テストですべてが分かるわけではない。だが、ここまでの混戦になるとは誰も予想していなかったはずだ。2017年シーズンのMotoGPでは、いったい何が起こっているのだろうか……!?
鍵となっているのは、タイヤだ。2009~2015年までの7年間、MotoGPはブリヂストンタイヤのワンメイクだった。しかし、2016年からミシュランタイヤにスイッチ。その特性の違いに、各チームは1年以上経った今も翻弄されている。