レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る

MotoGP ニュース

投稿日: 2018.09.05 16:56
更新日: 2018.10.01 19:20

日本人はなぜ世界で苦しむのか。その理由をライダー視点で解説/ノブ青木の知って得するMotoGP

レースを愛してやまないファンの方々へ
autosport web Premiumが登場。

詳細を見る


MotoGP | 日本人はなぜ世界で苦しむのか。その理由をライダー視点で解説/ノブ青木の知って得するMotoGP

 スズキで開発ライダーを務め、日本最大の二輪レースイベント、鈴鹿8時間耐久ロードレースにも参戦する青木宣篤が、世界最高峰のロードレースであるMotoGPをわかりやすくお届け。第13回は、日本と海外のサーキットの違いについて。第12戦イギリスGPでは雨の影響で路面コンディションが回復せず中止となったが、この結果も海外特有の路面がもたらしたものだというが果たして。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

■水はけの悪さゆえに起こったイギリスGP決勝の中止

 第12戦イギリスGP決勝は、雨で路面状況が悪化。4時間以上にもわたるディレイの末に、結局は全クラス中止となってしまった。全クラスの決勝中止は雪に見舞われた1980年オーストリアGP以来とのことだから、実に38年ぶりの珍事だ。

 だが今回の決勝中止は天候が原因だったわけではなく、路面の舗装が問題だったと報じられている。要するに雨水がはけずに溜まってしまったわけだが、「ああ、いかにもイギリスらしいなあ……」と思いましたよ、ワタシは。

 イギリスは、自然の地形そのままにサーキットを造る傾向が非常に強い。ネイチャーを大切にするお国柄なのか何なのか、理由はよく分からないが、元の地形を改良することなくアスファルトを流しただけ、といった様子のサーキットが多いのだ。

雨の影響で路面コンディションが回復せず中止となった第12戦イギリスGP決勝
雨の影響で路面コンディションが回復せず中止となった第12戦イギリスGP決勝

 通常、サーキットのコーナーはアウト側が高く、イン側が低いというカント(傾き)が付けられているが、イギリスのサーキットは地形のままのコーナーばかり。しかも排水性がない駐車場みたいなアスファルトを貼っているから、水はけなんかするワケない。だから今回のような事態も、「イギリスならあり得るかもなあ」と思ってしまう。

 そういった路面状況や、走るライダー側の心情を考えれば、中止は妥当な判断だった。サーキットに足を運んだり、テレビやネットで観戦しようとしていたお客さんたちのことを考えると心が痛むが、モータースポーツは危険を伴うもの。過剰なリスクは排除すべきだ。翌日に延期という考え方もあるが、もろもろ考慮すると現実的ではなかったのだと思う。

■日本の作りとあまりにも違い過ぎる海外サーキットの路面

 それにしても、イギリス……。シルバーストンを走ったことはないけど、ドニントンパークではレースしたことがある。これがまさに地形そのまんまのサーキット! スターキーズストレートはうねうねしており、場所によってはジャンピングスポットと化していた。

 スターキーズストレートをジャンプしないようにクリアするのがまた難しい。普通にまっすぐ行くと絶対にジャンプかウイリーしてしまうので、ちょっとスロットルを戻すとか、ちょっとリヤブレーキをかけるという小ワザを駆使して通過するしかなかった。ところがある時、あるライダーが「蛇行すれば全開のままイケるぞ!」と気付き、新しいラインを創り出した。すると、みんなすかさずマネ(笑)。全開蛇行ラインが定着した。

 それでもブレーキングポイントのハンプ(こぶ)はどうしようもなかった。考えられますか? GPマシンを走らせてフルブレーキをかけようという所にこぶがあるなんて……。1993年にミック・ドゥーハンがこぶに乗って転倒し、そこにケビン・シュワンツが突っ込んで前方宙返り、なんてビッグクラッシュも発生した。

 こういったハンプ、ギャップ、バンプがあちこちにあることに加えて、もともとの路面グリップ自体も低い。これはイギリスに限らず海外のサーキットには軒並み当てはまるが、まーとにかくグリップしない。


関連のニュース