イギリス在住のフリーライター、マット・オクスリーのMotoGPコラムをお届け。2017年の第8戦オランダGP以降、勝利のないヤマハ。その原因は直列エンジンにあるのか。また、2019年シーズンはヤマハが直列エンジンからV型エンジンに換えるのではとオクスリーは予想しているが果たして。
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V4エンジン勢のドゥカティとホンダはMotoGPの過去22戦で優勝を飾ってきている。ヤマハは信頼性のあるインライン4(直列4気筒)エンジンを見限る時が来ているのか?
バレンティーノ・ロッシがとうとう語った。数万の熱狂的な観客の前で、日曜のサンマリノGPを7位という期待はずれの順位でフィニッシュした後、7度のMotoGPチャンピオンであるロッシは疑問を口にしたのだ。「ドゥカティとホンダはV4エンジンを使っている。僕たちはインライン4だ。それが問題なのかもしれない……」
■V型エンジンは直列エンジンよりも優れているのか
しかし本当にV4エンジンのヤマハYZR-M1は、ロッシとヤマハを常勝街道へと戻してくれるだろうか? 言い換えれば、V4エンジンはインライン4エンジンよりも優れているのだろうか?
それは見方によるだろう。V4エンジンは過去22戦で優勝しているが、そのことがV4エンジンがベストだという妥当な説明以上のことを証明しているだろうか。もしくはドゥカティとホンダは、ヤマハよりもエンジン内部と電子系においてより賢明な取り組みをしているだけなのではないのだろうか?
ほとんどのMotoGPエンジニアは、V4とインライン4には一長一短があると考えている。両方とも優れた面とそうでない面があるというのだ。レースにおいては妥協がすべてだ。有利な点を最大限に生かし、不利な点を最小限に抑えることが重要なのだ。
インライン4エンジンはよりコンパクトなため、シャシー担当のエンジニアは理想的な重心を見つけるために前後や上下にエンジンを動かすことができる。それがヤマハのYZR-M1が過去15年にわたって、最もハンドリングしやすいMotoGPバイクである理由だ。
ほんの数年前は、ドゥカティが重用する90度V4エンジンが日の目を見る日が来るのか、多くの人々が疑問に思っていた。彼らによればこのエンジンは長すぎ、そのためにデスモセディチGPはステアリングとハンドリングの問題を抱えていた。なぜならエンジニアはエンジンを適切な場所に配置することができなかったからだ。
そして、ホンダもRC213Vに90度V4エンジンを使用していることを明らかにした。双方のファクトリーが出した答えは、エンジンをフレーム内でわずかに後ろに回転させ、シャシーデザイナーの作業の余地をより多く作り出すことだった。だが、それでもYZR-M1がライバルよりもより速いコーナースピードを出せることは確かだ。