イギリス在住のフリーライター、マット・オクスリーのMotoGPコラム。2月6~8日にマレーシア・セパンで行われたMotoGPオフィシャルテストで見えたホンダとドゥカティの開発方針をオクスリーが分析する。
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ホンダとドゥカティは現在のMotoGPチャンピオン候補であり、2019年のタイトルを巡る戦いはこれまでにないほど厳しいものになることに疑いの余地はないだろう。
ホンダRC213Vとドゥカティ・デスモセディチGPの両方にアドバンテージがあるが、それは双方に不利な点もあることを意味する。だが、今のMotoGPは激しい接戦となっており、チャンピオンシップを制覇したければ、不利な点をひとつでも持つ余裕はない。したがって、両ファクトリーがセパンで重点を置くのは、3月のシーズン開幕戦カタールGPに挑むにあたって、不利な点を取り除くことだろう。
ドゥカティには大きなアドバンテージがあることはよく知られている。それはストレートでのスピードだ。2018年シーズンの全18戦のうち、14戦でデスモセディチGPは最速のトップスピードを記録した。一方、RC213Vが最速だったのはそのうちの4戦で、ヤマハYZR-M1が最速だったのは1戦のみだ。
ドゥカティからホンダに移籍したホルヘ・ロレンソのおかげで、我々はデスモセディチGPの弱点を確認することができた。2018年、ロレンソは私にデスモセディチGP18は“ボートを漕ぐように”走らせなければならなかったと話した。コーナーを通過する際にバイクを正しい方向へ向けるために、リヤブレーキを使わなければならなかったのだ。
2018年11月に初めてRC213Vを走らせたロレンソは、「このバイクの最大の強みとなる性質は、機敏性とコーナーエントリーにある」と語った。
つまり、ホンダは2019年にはトップスピードをより向上させる必要がある。そして、ドゥカティはコーナリングと機敏性を向上させる必要があるということだ。
ホンダとドゥカティの開発者たちは、こうした目標をどのように達成しようとするだろうか?
■RC213Vのトップスピードを上げることに注力するホンダ
ホンダはRC213Vからより多くのパワーとトルクを引き出そうと、かつてないほどに懸命に取り組んでいる。
ホンダ・レーシング(HRC)の経験豊富なエンジニアである国分信一は、両手でRC213Vがスリップストリームを使いドゥカティを抜く真似をし、「これが実際に起こることを夢見ています」と満面の微笑みを見せる。
「ホンダがマン島TTレースに初出場したときから、本田宗一郎は常に言っていました。エンジニアはライダーにより良いチャンスを与えるために、大きなパワーを生み出さなければならないと」
ホンダが今もRC213Vのエンジンからさらに強大なパワーを引き出そうと思っていることは驚きかもしれない。このエンジンは7シーズン目に入ろうとしているのだ。
だが実際、ホンダがエンジンのパワーを引き出そうとすることは完全に理にかなっている。なぜならホンダの90度V4エンジンは2016年と2017年に大幅に再設計されている。クランクシャフトの向きを変え、その後、点火構成をビッグバン式に切り替えた。技術的に劣る電子制御時代において、エンジンを使いやすくするためだ。