イギリス在住のフリーライター、マット・オクスリーのMotoGPコラム。MotoGPオフィシャルテストで登場したホンダRC213Vに付けられた“弁当箱”について分析する。
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ホンダはさらなるトップスピードを追求している。マレーシア・セパンでのオフィシャルテストから登場したホンダの新パーツがそのことを証明しているかもしれない。
トップの写真は、2月初旬にセパンで行われた2019年最初のオフィシャルテストで、ホンダ・レーシング(HRC)のテストライダーを務めるステファン・ブラドルが左コーナーを通過するところをとらえたものだ。
この写真からは、ドゥカティのトップスピードにおけるアドバンテージを消し去るためのホンダの努力がうかがえる。
新たな空力設計は別として、ファクトリーがストレートでのパフォーマンス改善に取り組むところを目にすることはめったにない。ほとんどの作業がボディワークのなか、エンジンやECU(電子制御ユニット)の内部で行われることになるからだ。
■ホンダRC213Vに付けられた“弁当箱”
写真の矢印Aが示すリヤカウルを見てほしい。注意深く見ると、ホンダのエンジニアが小さな容器のようなものをシートハンプの左側面に付けたことに気づくだろう。2017年のプレシーズンテストで初めて登場したドゥカティのいわゆる“サラダボックス”に似ている。このホンダのキットは“弁当箱”とニックネームをつけてもいいかもしれない。
この弁当箱の中身は何か? 矢印Bを見ると、11月のバレンシアテストで一部のRC213Vに見られた、タンクカバーから突き出た小さなカーボンファイバー製のパーツがないことに気づくだろう。こうしたパーツは、さまざまな電子制御ケーブルとコネクターを隠しており、以前は燃料タンクカバーの下に取り付けられていた。
ホンダはエンジンの吸気を改善することで、馬力とトルクを増大させようと懸命な取り組みをしている。そのため、エアインレットとエアボックスの再設計がなされ、さまざまな電子制御パーツとステアリングダンパー(矢印C)の配置換えが必要になった。
2019年型RC213Vのステアリングダンパーは、下のトリプルクランプ(フロントフォークを支えるパーツ)ではなく、トップブリッジの上に固定されている。
そのため“弁当箱”に電子制御キットが収納されているのは確実だと思われる。V5エンジンからV4エンジンとなった800ccのホンダRC212Vを作成して以来、リヤカウルはつねに最小限のものにされていた。2007年のホンダRC211Vにいたっては、シートカウルがかなり小さかった。
これは5年前にRC211Vで始まったマスの集中化(重量を重心に近い位置に集中すること)というプロセスの一部であり、レース全体においてマシンの挙動を改善するためのものだ。
マスの集中化は重要ではあるが、電子制御やオンボードカメラ機器、マスダンパーといった様々な種類のキットを、リヤカウル部分を利用して取り付けることには相応の理由がある。バイクの最後部に荷重を置くことで、速いラップタイムを出す上で大きな妨げとなるチャタリングを弱めることができるのだ。