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MotoGP ニュース

投稿日: 2019.03.26 20:12
更新日: 2019.03.26 20:13

過酷なマン島TTのコースに挑む電動バイク『神電 八』。チーム無限監督に聞くマシン開発秘話

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MotoGP | 過酷なマン島TTのコースに挑む電動バイク『神電 八』。チーム無限監督に聞くマシン開発秘話

 2012年からマン島TTレースに電動バイク『神電』で参戦しているTEAM MUGENが、クラス6連覇を目指し2019年の参戦体制発表を東京モーターサイクルショーで行った。年々進化している電動バイクレースをいち早く開発してきたTEAM Batham’s MUGENの宮田明広監督にマシン開発について聞いた。

 マン島TTは、1907年からマン島の一般公道を舞台に行われ、1周60.73kmのコースをタイムトライアル形式で競い合う。そのコースは市街地、住宅街、山間部を含む一般公道で、高低差400メートル、コーナー数は200以上にも及ぶ。

 TEAM Batham’s MUGENが参戦しているのは、2009年に新設されたTT Zeroクラスだ。二酸化炭素を一切排出しないゼロエミッションカテゴリーで、主に電動バイクが参戦している。マシンが搭載するバッテリー性能や容量の関係で、現在は1周のみ周回して競われる。

TEAM Batham’s MUGENの宮田明広監督
TEAM Batham’s MUGENの宮田明広監督

 2019年の参戦マシンである神電 八(SHINDEN HACHI)の開発について「パワーユニットを開発していくというのはTEAM MUGENの一番得意なところです。そこをテーマにあげて年々進化はしてるんですが、それに反して車両に対するストレスや負荷は自分たちが想像している以上に厳しかったりするものがあります」と宮田監督は語る。

「特にマン島のコースは、国内のサーキットでなかなかシミュレーションできないというところがあります。現地にいかないとどういうことが起きるかわからず、我々もこれまでの経験でこれくらいだろうというところでやっています」

「ライダーの乗り方、進化、そういうもので(マシンに)大きな負担がかかって、フレームであるとか駆動系の方にトラブルが起きてしまったと、そういう経緯がありましたので、今年はどちらかというと失敗の信頼性、そういうところに重点を置いて開発を進めました」

2018年に参戦したマイケル・ルター(TEAM MUGEN)
2018年に参戦したマイケル・ルター(TEAM MUGEN)

 2018年はマイケル・ルターとリー・ジョンストンのラインアップで戦い、ルターが18分34秒956のコースレコードを記録しチーム5連覇。ジョンストンも3位を獲得し、両ライダーともに表彰台にのぼった。

 そして、ルターのタイムはコースレコードを20秒以上更新するもので、最高時速は280キロ以上、平均車速は目標としていた120マイル超えの121.824マイル(約196キロ)を達成する結果となった。

 しかし、実際には車両のトラブル、駆動系のトラブルを抱え、苦戦した年でもありテスト走行も満足にできなかったという。

「(マン島のコースは)ストレートが特に長いと思いますが、フラットな直線路ではなくてギャップやわだちがあるんですね。真っすぐと言っても軽くコーナリングしていてバンクさせて攻めていくようなところもあります」

「多くのギャップがあるので、通常のロードレース以上にジャンプし、接地の衝撃があり、そういうものにも対応しなければいけないというと、かなりロードコースとは違った負担というか影響が大きいですね」

「セッティングももっと極めてやりたかったんですが、(昨年は)テストメニューをこなせなかったというのもあり、我々として去年は必ずしも満足いったものではありませんでした」

2019年のマン島TTを走る『神電 八(SHINDEN HACHI)』は想像以上の負荷に耐えられるよう開発された
2019年のマン島TTを走る『神電 八(SHINDEN HACHI)』は想像以上の負荷に耐えられるよう開発された

 国内のサーキットでは予測できないことが、マン島TTでは起こることがわかったが、現地でのセッティングにも苦労があるという。

「(現地でのセッティングは)走って止まってを何回も繰り返してのものではく、コース一周(約60キロ)を走ってその結果を聞くというやり方です。200あるコーナーのすべてのインプレッションを聞けるわけではないですから、ここは特にこうしてくれという強い要望のところをアジャストしていくという取り組みになったりします」

「(ライダーは)その時、極限まで攻めるというか、どう乗りやすくうまく攻められるかというところをこだわって、インプレッションしてくるので、それに対して要点を見つけて調整するっていうのが取り組みです」

 また、2012年からマン島TTを戦うTEAM Batham’s MUGENの電動バイクにおける開発の思いについては次のように語る。

「バッテリーもモーターも制御もすべて年々テーマを持って進化させることはできます。当然予算も上限がありますので、我々のやれる範囲の中で可能な限り開発を取り組んでいくっていうのが我々の目指すところです」

「(電動バイクは)今のガソリンエンジンと同じような方向で使えるよう、より身近に僕らが乗れるような世界に移行していくのではないかなと思っていて、我々もそういうところを目指してものを作っていかないといけないなと思います」

「今はジョン(・マクギネス)、ブルース(・アンスティ)、マイケル(・ルター)しか乗れない車両なので、これがもっと一般の人たちにも楽しんでいただけるものという領域にいければという思いをもってやってます」

2019年のマン島TT、TT Zeroクラスで走る『神電 八(SHINDEN HACHI)』
2019年のマン島TT、TT Zeroクラスで走る『神電 八(SHINDEN HACHI)』

 2019年のマン島TTレースは5月25~6月7日に開催され、TT Zeroクラスは6月5日に決勝レースがスタートする。TEAM Batham’s MUGENはルターとマクギネスの2台体制で戦い6連覇を目指す。


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