ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの国内4メーカーがしのぎを削り合っている全日本ロードレース選手権JSB1000クラス。そんなJSB1000の車両をピックアップし、ライダーや関係者にマシンの強みや魅力を聞いていく。今回は、カワサキのトップチームKawasaki Team GREENのNinja ZX-10RRにフォーカスする。
ーーーーーーーーーー
全日本ロードレース選手権JSB1000クラスの開幕戦もてぎから第3戦SUGOまで、Kawasaki Team Greenの渡辺一馬は全6レースすべてを5位で終えている。ホンダの高橋巧と水野涼、ヤマハの中須賀克行と野左根航汰にあと1歩及ばず、今のところ表彰台には立てていない状況だ。
渡辺は2017年、ホンダからKawasaki Team Greenに移籍し、ZX-10RRを走らせてきた。2017年、2018年はランキング3位につけている。「ZX-10RRは、自分の乗り方に合っているんです」と笑顔を見せる渡辺。
「最初にZX-10RRに乗った時は、『トップエンドで良く伸びるパワフルなエンジンだな』と思いました。『これは確かに最高速が出そうだな』と」その特性は量産車でも同じで、「量産車に乗ってもカワサキ独特の伸び上がりは共通している」と渡辺は評する。
ZX-10RRの開発者である下園隼人は、全日本ロードJSB1000のみならずスーパーバイク世界選手権(SBK)も担当している。
「パワーの追求はもちろんですが、それだけでは足りません。扱いやすさが重要なんです」と下園。
「SBKではジョナサン・レイ選手が2015~2018年と4連覇していますが、彼のスムーズな速さを支えているのはZX-10RRの扱いやすいトルク特性です。SBKで頂点を獲得するために得た知見は、2019年型ZX-10RRにも投入されており、全域でパワーアップを果たしながら、扱いやすさにもさらに磨きをかけました」
「この特性はもちろん、電子制御の考え方も含め、JSB1000マシンにも量産車にもフィードバックしています」
ただし今年のSBKではドゥカティのニューマシン、パニガーレV4Rが旋風を巻き起こしている。レイは第5戦までに行われた13レースで2勝を挙げているものの、今までのようなアドバンテージはない。
下園は「SBKではエンジンのレブリミットが量産車エンジンの最高出力発生回転数+アルファというかたちで決められる。量産車の時点で最高出力発生回転数を高く設定してきたパニガーレV4は、我々より1750rpm余分に回すことができ、その差は無視できない」と説明する。
JSB1000ではレブリミットこそ設けられていないが、レギュレーションによりエンジンの改造範囲は厳しく制限されている。下園は「動弁系や慣性マスの低減など、レギュレーションで許されている限りのことをやって、パフォーマンスを高めている」と言う。