イギリス在住のフリーライター、マット・オクスリーのMotoGPコラム。第14戦アラゴンGPではヤマハ勢がタイヤに苦戦する一方で、アラゴンは苦手とされているドゥカティ勢が復調を見せていた。その理由は何なのか。オクスリーが解説する。
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ヤマハは第14戦アラゴンGPで散々な1日を過ごしていたし、スズキも同様だった。1周目でアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)がフランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)に接触して転倒させたのだ。一方、ドゥカティは第12戦イギリスGPと第13戦サンマリノGPでは無残なレースをしたが、ここでは良いレースをしていた。
ドゥカティはどうしてアラゴンで調子が良かったのだろうか?(アンドレア・ドヴィツィオーゾのドゥカティ・デスモセディチGPが時速約346.1km/hを出した最速のバイクであり、マルク・マルケスのホンダRC213Vより時速約5.9km/h速かった事実は別として)アラゴンは大部分がロングコーナーで、通常はデスモセディチGPが強さを出せるところではない。バイクのバンク角は多くの時間深くなり、そのせいでタイヤを傷めてしまう。
もしかしたら、バンク角が深い時間が長いことが、ドヴィツィオーゾがあれほど強かった理由かもしれない。なぜならドヴィツィオーゾはタイヤ管理の名手であるからだ。
ドヴィツィオーゾは2017年から2018年までに10回優勝しているが、それはドヴィツィオーゾがスロットルを駆使してホイールスピンを最小限に抑えることに長けていることが大きい。そのためドヴィツィオーゾのタイヤは、重要な終盤の周回においてライバルたちよりもラバーが残っているのだ。
2019年、ドヴィツィオーゾが2勝しかしていない理由は、2019年のミシュランのリヤスリックが丈夫で長く保つことが主な理由だろう。そのことがドヴィツィオーゾのタイヤを労わるスキルを無効にしてしまっているのだ。しかし、こうしたスキルがアラゴンではふたたび役に立った。
週末の間、ほとんどのチームはリヤタイヤを労わるために初めの3速のトルクを大幅に抑えていた。しかしタイヤライフの大部分はライダーの手にかかっていた。
マルケスのように、ドヴィツィオーゾとジャック・ミラー(プラマック・レーシング)はソフトのリヤスリックを選んだが、それはロングコーナーのある高速でグリップのあるコースに対しては愚かな選択だったかもしれない。
だがほとんどのライダーとチームは、今ではミシュランタイヤの挙動を理解している。ソフトのリヤタイヤはよりグリップがあるため、スピンしにくい。理論上、ハードのリヤタイヤは長くもつはずだが、グリップが少ないためスピンが多くなり、したがって長くはもたない。もちろんこれはコースによる。
「ミシュランは各レースにタイヤを持ち込んで、僕たちはどのタイヤがどの温度範囲で機能したかという書類を書くことになっている」とミラーは語った。
「僕の経験では、ソフトで走行するとよりグリップが得られる。タイヤをスピンさせすぎずに、適切に扱えばだけどね。酷使せずに、あまり力をかけないようにするんだ」
ミラーは決勝レース最後の9周でドヴィツィオーゾの後ろを走行していたが、その間に多くを学んだという。
「アンドレアはいくつかのコーナーでは僕よりも少しタイトに走り、より加速を得ていた」とミラー。
「それに対して僕の方は、コーナーに進入する際にスピードを出しすぎてワイドに走り、スロットルを開けるのが少し早すぎた。一旦、アンドレアが僕を追い抜いて、僕はやるべきことを理解した。特に丘の上の4、5、6コーナーでだ。アンドレアは縁石にぴったり沿って進み、僕より多くのグリップを得ていて、かなり小さいトルクで、距離を短くしようとしていた」