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MotoGP ニュース

投稿日: 2019.11.13 16:50
更新日: 2019.11.13 17:38

【MotoGPコラム】何故ヤマハがセパンを制したのか。ビニャーレスがバイクの感触を取り戻した手段

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MotoGP | 【MotoGPコラム】何故ヤマハがセパンを制したのか。ビニャーレスがバイクの感触を取り戻した手段

 イギリス在住のフリーライター、マット・オクスリーのMotoGPコラムをお届け。第18戦マレーシアGPではヤマハ勢が速さを見せ、マーベリック・ビニャーレスが優勝。2019年2勝目を挙げた。ヤマハがマレーシアGPを制した理由は何だったのか。オクスリーが分析する。

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 マーベリック・ビニャーレスが第18戦マレーシアGPの決勝でどう出るか、誰も見ていなかった。だが始まってみれば、ヤマハはライダーもバイクもタイヤもすべてが正しかった。しかし、ヤマハのマレーシアGPでの圧倒的優位にはそれ以上の理由があった。

「バイクの調子が良くて、ミシュランがバイクに合ったタイヤを用意してくれるようなコースなら、真っ先に走り去っていくよ。ヤマハは間違いなく最高のバイクだからね」とビニャーレスは数週間前に私に語った。

「でも苦戦するようなコースでは、大いに苦しむことになる。だから2位ではなく、7位や8位になってしまう。そこが改善の必要があるところだ」

 それこそがヤマハが改善してきた部分なのだ。ビニャーレスがこれほど安定してポイントを獲得していたのは2017年の序盤のことだ。ビニャーレスはチャンピオンシップの序盤で優勝を飾ったが、その後、ビニャーレスとヤマハYZR-M1は失速してしまった。

 その時から得体の知れないヤマハの苦難が始まった。最高峰クラスに1970年代初めに初参戦して以来、2017年7月から2019年10月の間の35戦でたった2度の優勝しか飾れなかったのだ。

 では、何が変わったのだろう? 突破口となった大きな出来事は何だったのだろうか? ヤマハはYZR-M1について興味深い発見をしたのだ。

 MotoGPを運営統括するドルナ・スポーツが共通ECUとミシュランタイヤを導入した後、ヤマハは自ら窮地に陥っていたが、一向に抜け出すことができずにいた。物事が間違った方向へ進んでいるときにありがちなことだ。懸命に改善を試みようとするのに、状況は悪くなる一方なのだ。

マーベリック・ビニャーレス/モビスター・ヤマハMotoGP
マーベリック・ビニャーレス/モビスター・ヤマハMotoGP

「マーベリックが2017年に加入した時、彼はどのコースでもとても速かったのですが、その後、彼は苦戦しました。我々はセッティングを改善しようとしたのですが、混乱してしまう時もありました」とヤマハのMotoGPグループマネージャーを務める鷲見崇宏は語っている。

 スピード改善の一助とするために、改良版フレームやシャシーがビニャーレスとチームメイトのバレンティーノ・ロッシの元に届き始めたことを覚えているだろうか? それらは役に立たなかった。一方、2017年から1年落ちのYZR-M1を駆っていたヨハン・ザルコは速さを見せていた。2019年のファビオ・クアルタラロのように。

「バイクが毎週末変わらなければ、マーベリックはそれぞれの状況に適応することに集中できるでしょう」と鷲見は付け加えた。鷲見は2019年の初めにプロジェクトの指揮を執り始めて以来、ヤマハの運命を転換させようとしている。

「ようやく2019年のバルセロナテスト(6月)で優れたベースセッティングを見出せました。ビニャーレスは今ではバイクのフィーリングを取り戻したのです」

 これは驚くような新事実ではない。ヤマハがスピードを出すための最大の秘密は、バイクを完全に把握することなのだ。

 もし、自分のバイクを良く理解していたら、バイクがスライドしたりぐらついたりする前に、バイクがどう反応するか分かるだろう。つまり、状況の先を常に読み、コントロールを失うことなしに安心して限界までプッシュできるということだ。

 これが、ビニャーレスがヤマハのカーボンスイングアームなどのアップデートを、すべて拒否した理由だ。なぜならパーツを追加したり変え続けたりすると、慣れた感触やバイクとの一体感を感じることができなくなるからだ。

「シーズン後半は、バイクを変えないことにした」とビニャーレスは語った。


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