2019年シーズンをもって現役を引退したMotoGPライダー、ホルヘ・ロレンソの足跡をたどる第2弾。『通算5度のタイトルホルダー、ホルヘ・ロレンソがMotoGPで走り続けた18年/(1)250ccクラスで2連覇を達成』に続く本記事では、ロレンソがMotoGPクラスにステップアップした2008年から、2度のチャンピオンを獲得する2012年までを追っていく。
2008年、ロレンソはヤマハのファクトリーチームであるフィアット・ヤマハ・チームから最高峰クラスデビューを果たした。チームメイトは、このときすでに通算7度のタイトルを手にしていたバレンティーノ・ロッシ。2008年シーズンはタイヤがブリヂストンとミシュランのコンペティションで、ブリヂストンを履くロッシに対し、ロレンソはミシュランを履いてシーズンを戦った。
ロレンソは、最高峰クラスのデビューレースである開幕戦カタールGPでポールポジションを獲得。決勝レースでは優勝こそ逃したが2位を獲得し、その非凡な才能を証明した。続くスペインGPでも3位表彰台を獲得したロレンソは、第3戦ポルトガルGPでついにクラス初優勝を飾る。
しかし、その威勢のよさはロレンソに好成績とともに転倒と怪我をもたらした。第4戦中国GPではフリー走行1回目の走行中に転倒を喫し、両足首を負傷。それでも決勝レースを走りきり、このとき4位を獲得した。
さらに第7戦カタルーニャGPのフリー走行2回目で、ロレンソは激しいクラッシュを喫した。ロレンソは頭部を激しく打ち付け、一時的な記憶喪失のような状態にもなった。この転倒により、ロレンソはカタルーニャGPの決勝レースを欠場している。こうした度重なる大きな転倒や怪我を負いながらも、ロレンソは1勝と6度の表彰台を獲得し、ランキング4位でMotoGPクラスのルーキーイヤーを終えた。
ロレンソが初めてのMotoGPタイトルを獲得するには、もう1シーズン、2009年を経験しなければならなかった。この年からタイヤはブリヂストンのワンメイクとなっている。2009年シーズンは、ロレンソとロッシという、チームメイト同士によるチャンピオン争いが展開された年だった。
特に第6戦カタルーニャGPでは、ロレンソとロッシは文字通り火花散る優勝争いを演じた。最終コーナーでロッシに交わされたロレンソは、優勝したロッシとの差わずか0.095秒差で2位に甘んじる。こうした激しいレースを展開し、ロレンソはロッシとチャンピオン争いを繰り広げていたが、終盤の第15戦オーストラリアGPのノーポイントが響いた。ロレンソはこのシーズン、チャンピオンのロッシと45ポイント差でランキング2位を獲得する。
MotoGPクラス3年目の2010年シーズン。ロレンソはこの年、18戦中9勝を挙げて16度の表彰台を獲得し、383ものポイントを積み重ね、ついに最高峰クラスの頂点に輝いた。ロッシが第4戦イタリアGPでの転倒により右足を骨折し、このイタリアGPの決勝レースを含む4戦の欠場を強いられたことも、優位に働いただろう。
このときロレンソが獲得した383ポイントは、2019年シーズンにマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が420ポイントを獲得してその記録を破るまで、最高峰クラスのシーズン最多獲得ポイント数であり続けた。