スーパーバイク世界選手権(SBK)の2020年シーズンが、オーストラリアのフィリップ・アイランド・サーキットで開幕した。今季のSBKは話題が豊富だ。なにしろチャンピオンチームであるカワサキ・レーシングチーム・ワールドSBKを含むパタ・ヤマハ・ワールドSBKオフィシャルチーム、Aruba.it レーシング-ドゥカティなどのトップチームのライダーの顔ぶれが変わった。
そればかりではない。ホンダが18年ぶりに、ファクトリーチームとしてSBKに復帰。日本人ライダーの高橋巧がホンダのサテライトチームMIEレーシング・アルティア・ホンダ・チームから参戦……と、注目ポイントが満載なのだ。そして、開幕戦はそうした期待を裏切らない熱戦が繰り広げられた。
■Team HRCのふたりは表彰台に届かず。ただし、ポテンシャルは十分か
ホンダのファクトリーチーム、Team HRCのレオン・ハスラムとアルバロ・バウティスタは、開幕戦の3レースで表彰台を獲得することはかなわなかった。ただ、ハスラムはレース1で終盤にはトップ集団に加わり、5位でフィニッシュしている。残り5周ほどで次第に上位の4台に引き離されてしまったが、これはタイヤのグリップが最後までもたなかったことが要因だったという。
実際、最後の5周までは、優勝したトプラク・ラズガットリオグル(パタ・ヤマハ・ワールドSBKオフィシャルチーム)をはじめとする上位4人のライダーと、そのペースはほとんどそん色がなかった。1分31秒前半から後半のラップタイムで戦っていたのだ。
ハスラムはスーパーポール・レースでは1周目にチャズ・デイビス(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)と接触しかけてラインを外して出遅れ、レース2では2周目の10コーナーでクラッシュ。日曜開催の2レースの結果が惜しまれる。
チームメイトのバウティスタは、グリッドによって追い上げのレースを展開することになった。スーパーポールでは転倒を喫し、15番グリッドに沈んだ。このとき、左腕を負傷している。レース1では猛烈な追い上げを見せ、10周目には7番手に上がると、チームメイトのハスラムの約0.5秒後ろ、6位でゴール。このポジションで争えるポテンシャルを証明した。
ただ、このレースを後方スタートから戦うには厳しかった、というべきだろう。バウティスタは、レース2の9番グリッドまでを決めるスーパーポール・レースでは、2周目の6コーナーでスリップダウン。完走したものの16位で、レース2のグリッドを上げることはかなわなかった。レース2では欠場のライダーが出たため14番グリッドからスタートし、6位でフィニッシュ。開幕戦の3レースはすべてが複数台による接近戦で、それが、オープニングラップから最終ラップまで、ときに役者を変えて争われるという激しいものだった。後方から追い上げ、さらにトップ争いに加わるには簡単ではなかった。
バウティスタ自身、「スプリントレース(スーパーポール・レース)での転倒によってレース2では後方からスタートだったから、今日(日曜)は昨日(土曜)よりもさらに難しかった。残念だ。スーパーポール・レースではトップ5で戦えると思っていたんだ」と語っている。
とはいえ、Team HRCはSBKを戦うために立ち上げられた新規チームで、そしてホンダCBR1000RR-Rも今季から投入されたマシンだ。そう考えれば、Team HRCとしては悪くない開幕戦だったと言えるのではないだろうか。
一方で、心配なのがホンダのサテライトチーム、MIEレーシング・アルティア・ホンダ・チームである。結果から見れば、2020年シーズンからSBKにフル参戦デビューを果たした高橋は、レース1でリタイア、スーパーポール・レースで15位、レース2でリタイア……と、リタイアが続いた。レース1とレース2のリタイアの原因はマシントラブル。そしてさらに気になるのがそのペースで、他ライダーと比べて2秒以上遅い。最高速にしても10km/h以上遅れをとっている。次戦以降、動向を見守りたいところだ。