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MotoGP ニュース

投稿日: 2020.03.04 16:30
更新日: 2020.03.04 17:36

決勝での「強さが足りない」。最高速不足を補うヤマハYZR-M1の武器/MotoGPマシン開発の裏側

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MotoGP | 決勝での「強さが足りない」。最高速不足を補うヤマハYZR-M1の武器/MotoGPマシン開発の裏側

 2020年1月末、ヤマハは矢継ぎ早に新しい体制について発表した。28日、マーベリック・ビニャーレスとの間で2022年までの契約を交わしたこと。29日、2021~2022年のヤマハ・ファクトリー・レーシングMotoGPチームにファビオ・クアルタラロを登用すること。同日、バレンティーノ・ロッシの2021年シーズン以降のレース活動計画は2020年シーズン半ばに決断すること。そして30日、2020年のテストライダーとしてホルヘ・ロレンソを起用すること──。

 連日の華々しい発表は、ヤマハに耳目を集めるという点で確かに功を奏した。そして2020年シーズンの幕を開けるマレーシア公式テストでは、3日間連続してファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)がトップタイムをマーク。カタール公式テストもヤマハが1-2-3で終えている。「ヤマハの時代」が始まろうとしているかのようにさえ見える状況だ。

 だが、2019年のヤマハは決して良いシーズンを送ったわけではなかった。ビニャーレスが2勝を挙げてランキング3位につけたものの、2017年シーズンから3年連続となる「ヤマハ最上位はランキング3位」。タイトル獲得を狙うファクトリーチームとしては、ホンダはもちろんのこと、ドゥカティにも届かない苦戦が長く続いているのだ。

鷲見崇宏ヤマハMotoGPグループリーダー
鷲見崇宏ヤマハMotoGPグループリーダー

 2019年末、ヤマハMotoGPグループリーダーの鷲見崇宏氏は「特に2017年と2018年は非常に苦しいシーズンでした」と振り返った。「もちろん毎年チャンピオン獲得を狙って全力を尽くしています。でもこの2年間は、モノを作っても作ってもマシンのスピードにつながらなかった。チーム、開発者、そしてライダーとみんながストレスを抱えていました。それぞれにみんな頑張っていたのに、成果が得られずにいたんです」

■見直したヤマハの武器

2019年型ヤマハYZR-M1(フロント)
2019年型ヤマハYZR-M1(フロント)
2019年型ヤマハYZR-M1(リヤ)
2019年型ヤマハYZR-M1(リヤ)

 2019年からグループリーダーとなった鷲見氏が最優先したのは、問題点の絞り込みだった。「今、自分たちに足りないのは何かを洗い出したんです。ヤマハYZR-M1はコーナリング性能が武器と言われていましたが、2017年、2018年はそこさえも弱くなっていた。かと言って、最高速でライバルに並べるエンジンが手元にあるわけでもない。では、どうするか。2019年は『コーナーの前後100mで誰にも負けないマシンを作ろう』と」。つまり、ブレーキングパフォーマンスとコーナーからの脱出加速の改善に集中したのだ。

 具体的な方策としては、主にエンジン開発に力を入れた。「コーナー前後100mというと車体の領域と思われるかもしれませんが、実は2019年は車体にあまり手を入れませんでした。力を注いだのはエンジン開発です。先ほど申し上げたように、改善の大きなポイントはブレーキングとコーナー脱出加速でしたから、それらがうまくこなせるようなエンジンを作り込んだんです。率直に言えば、最高速の不足をそれらで補おうとしました」

カウルを外した2019年型ヤマハYZR-M1(フロント)
カウルを外した2019年型ヤマハYZR-M1(フロント)
カウルを外した2019年型ヤマハYZR-M1(リヤ)
カウルを外した2019年型ヤマハYZR-M1(リヤ)

 2018年型から2019年型になった際、「エンジンは中身の構造をすべて変えています」と鷲見氏。「爆発間隔やボアストロークは同じですが、出力特性を作るためのすべての寸法や形状をすべて変えました。狙ったのは変化量の大小ではなく、(パワーカーブの)どこを盛り上げ、どこを下げたらどういった特性になるか、ということです。正直、特性の作り込みに関してすべてが把握できているわけではありませんので、試行錯誤を繰り返しながら仕様を決めました」

「エンジンパワーも例年同様に向上させているが、上積み幅は少ない」と鷲見氏は明かす。ピークパワーの絞り出しではなく、エンジンブレーキ特性やコーナー脱出の加速性能など過渡特性の作り込みに集中したわけだが、必ずしも「大成功」ではなかったようだ。


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