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MotoGP ニュース

投稿日: 2020.04.07 07:15
更新日: 2020.10.15 15:08

ヤマハOBキタさんの「知らなくてもいい話」:MotoGPの4サイクルの技術規則はこうして決まった(後編)

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MotoGP | ヤマハOBキタさんの「知らなくてもいい話」:MotoGPの4サイクルの技術規則はこうして決まった(後編)

 レースで誰が勝ったか負けたかは瞬時に分かるこのご時世。でもレースの裏舞台、とりわけ技術的なことは機密性が高く、なかなか伝わってこない……。そんな二輪レースのウラ話やよもやま話を元ヤマハの『キタさん』こと北川成人さんが紹介します。なお、連載は不定期。あしからずご容赦ください。

前編中編はこちらから

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 排気量1000cc以下で気筒数に応じた最低重量を定める――。しかし厄介な問題がひとつ残っていた。楕円ピストンのような傑出した固有技術の扱いをどうするかという、センシティブな件についてだ。

 筆者は敢えてこの技術を排除せず、倍の気筒数にカウントして車両重量のハンデを負わせるという案を出した。とはいっても件の技術を保有するメンバーは当然承服するはずはないし、欧州メーカーも「楕円ピストン、断固禁止」のスタンスを変えようとはしなかった。

 いまとなってはどういう経緯をたどったか記憶が定かでないが、ひとまず楕円ピストンに関しては非常に不利な規則に落ち着いた。件のメンバーは「そんなの聞いてない。寝耳に水だ」と怒り狂うも、「前回の会議で決まった話ですしね。いまさら言われても……」と議長をはじめとして全員でスルーして強制終了してしまった。

 憤懣やるかたないそのメンバーは、人物的にはとても好感の持てる方だった。だから、「会社に戻ってこの報告したら、さぞや怒られるんだろな」と気の毒に思ったのが妙に鮮明な記憶として残っている。

 さて、何とか落としどころが見えてきて、ひと息ついた筆者を待っていたのは、「悪いけど役員がどうしてもというから異動してくれないかな。いまなら条件のいいところに行けるから」という上司の一言。言いかたはソフトだが、ここでゴネたらどこに飛ばされるか分からんよという恫喝みたいなものだった。


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