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MotoGP ニュース

投稿日: 2020.04.21 12:40

ヤマハOBキタさんの「知らなくてもいい話」:MotoGPの排気量変遷の謎(後編)

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MotoGP | ヤマハOBキタさんの「知らなくてもいい話」:MotoGPの排気量変遷の謎(後編)

 レースで誰が勝ったか負けたかは瞬時に分かるこのご時世。でもレースの裏舞台、とりわけ技術的なことは機密性が高く、なかなか伝わってこない……。そんな二輪レースのウラ話やよもやま話を元ヤマハの『キタさん』こと北川成人さんが紹介します。なお、連載は不定期。あしからずご容赦ください。

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 2007年に990ccから800ccに変更されたMotoGPクラスの排気量。それがまた変更されたのは2012年のことだ。

 リーマンショック(2008年に起こった世界規模の金融危機)の影響はすさまじい勢いで企業活動にブレーキを掛けていった。当然二輪メーカーのレース活動もいつ休止宣言が出されてもおかしくない状況だった。なんとかレース活動を存続するためには開発費と運営費を大幅にコストダウンするしかない。なぜならライダーの契約金は更新のタイミングでもないかぎり簡単に減額できないからだ。

 Y社の発議でMSMA(Motor Sports Manufacturers Association:モーターサイクルスポーツ製造者協会)内部でもコスト削減案について話し合いが始められたが、各社の思惑はさまざまで、これを機会にそれぞれの強みを生かして優位に立とうという嫌らしい戦術が透けて見えるありさま。これではなかなか合意に至るはずもない。

 それでも技術的には後退するのを覚悟で新規開発を抑制する技術規則と運営費を抑制するエンジン台数制限などを織り込んでレースは続けられ、皮肉なことにY社も大幅に開発費を絞りこんだにも関わらず2008年から3年連続で王座に君臨することになったのは興味深い事実である。個人的には2006-2007年と連続して苦汁を嘗めたことでエンジン開発と制御開発の抜本的な見直しと投資を行った結果、開発を絞ったあともその効果が持続したと考えているが、当然素晴らしいライダーたちの存在あっての成果なのは間違いない。

■2012年以降は乗りやすいレーシングマシンへと変貌したMotoGPマシン


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