日本のトップメーカーからプライベートチームまでがしのぎを削る2020年の全日本ロードレース選手権。そのなかから2020年に登場した新型マシンをピックアップして、ライダーや関係者にマシンのインプレッションを取材。今回は、新型のBMW S1000RRにフォーカスして、今季から新設されたST1000クラスを戦う星野知也(TONE RT SYNCEDGE4413 BMW)にバイクのポテンシャルを聞いた。
※ ※ ※ ※ ※ ※
2018年11月にEICMA2018(ミラノショー)で世界初公開されたBMWの新型S1000RR。日本では2019年3月に行われた大阪モーターサイクルショーで初めて公開されたが、納期が遅れたため購入者の手に渡ったのは2020年に入ってからとなった。
2009年に初登場してから10年近く経ち、今回のフルモデルチェンジで5代目となったS1000RRは左右対称なデザインのフロントマスクになったことで見た目の特徴が変化した。
また、可変バルブタイミング機構であるBMWシフトカム・テクノロジーを採用した新開発の水冷並列4気筒999ccエンジンを搭載。先代モデルから11kg軽量化され、燃焼効率の向上と、低・中回転域での出力が向上したことで市販モデルの最高出力は8馬力アップして207馬力/13,500rpm、最大トルク113Nm/11,000rpmを発揮する。
■大幅な進化を遂げた新型S1000RR
2018年にSYNCEDGE4413Racingに加入してBMW S1000RRを駆りJSB1000クラスを戦ってきた星野知也。今季は新型S1000RRに乗り換えて、ST1000クラスにカテゴリーを移した。
6月に初めて新型マシンでサーキットを走り、ツインリンクもてぎ、スポーツランドSUGO、鈴鹿サーキットでテストを行ってきたというが、初めてこのバイクに乗ったときの印象をこう語る。
「昨年型のS1000RRと比べると、すべてが進化しています。エンジンはパワーがあるし、電子制御の介入がライダーに伝わりやすくなっていてすごく乗りやすいです。(昨年型と)まったく別のマシンだけどBMWの良さがそのまま残っているし、フルモデルチェンジしても乗りづらくなっていないし、変な癖もありません」
「電子制御はあまり良くなかった部分がすごく良くなっていて、自分のライティングにマッチしているところがあるので良かったですね。ベースセッティングが出ていないからタイム的にはまだまだですが、昨年のバイクのタイムを抜けるくらいのポテンシャルがあると感じています」
さらにTONE RT SYNCEDGE4413 BMWがレースで使用するS1000RRを組み立てたチーフメカニックの高村嘉寿氏にも昨年型から改良された部分を聞いた。
「今までのフルモデルチェンジは、エンジンの基本は変わらず、少しシリンダーヘッドが変わっていたり、フレームも細かい部分がマイナーチェンジされたパターンでした。しかし、この新型S1000RRはすべてが違うので先代モデルと共通部品がほぼありません。同じなのはアクスルシャフトやエンブレムくらいですね(笑)」
「エンジンはスムーズで速いし、ここ数年で電子制御の開発が進んだと思います。電子制御とフレーム周りは街乗りのタイヤに合わせて作られているので、スリックタイヤを履かせた時のアジャストが必要ですが、いままでのオートバイとセッティングの内容は変わりません」
あらゆるパーツが昨年型から変更されているというが、新型マシンのパフォーマンスはメカニック目線でも絶賛できるものだという。
「旧型モデルから(問題点が)すべて解消されています。イメージとしてはレースのメカニックが“こうだったらいいのにな”というものを形にしたバイクです。ネガティブな部分はなく不満が出てきません。だから現場で働いている僕たちはすごくやりやすくなりました」